2022年のスーパーGTは、12号車カルソニック IMPUL Zの平峰一貴、ベルトラン・バゲット組がシリーズチャンピオンに輝き、今季から導入されたZに初年度でのタイトルをもたらした。日産陣営はランキング2位にも3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zの千代勝正、高星明誠組が入り、参戦する4台全てが複数回表彰台に上るなど、Zの強さが際立ったシーズンでもあった。

 Zがライバルメーカーに対して強さを発揮できた要因はどこにあったのか? 日産陣営、そして他陣営の関係者のコメントから探っていく。

 Zは何より、様々なタイプのサーキットで安定して速いオールマイティな部分が目立っていた。これについて日産系チームを率いる松村基宏総監督は、GT-RからZにスイッチするにあたり、空力バランスやシャシー側のセッティングが進歩したことでトップスピードとコーナリングスピードのバランスが向上し、様々なコースで速さを見せられる適応能力が備わったと語っていた。

 実際に最終戦もてぎでも、Zは4台中3台が予選トップ5に。しかもその3台が履いているタイヤはブリヂストン(12号車)、ミシュラン(3号車)、ヨコハマ(24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z)と全て異なっており、タイヤメーカーに依存しないZのオールマイティさ、適応能力が証明されたようなセッションとなった。

 これについては松村総監督も満足感を口にした。

「ライバルがタイヤのデグラデーションに苦しんでいたかどうかなど、他陣営の状況はよく分かりません。ただ日産の場合は、タイヤサプライヤーが3つに分かれているにもかかわらず、どのチームも良いパフォーマンスを見せてくれました」

「(最終戦の)もてぎはストップ&ゴーのサーキットで、ノーウエイトという状況でした。23号車がQ1を突破できなかったのは残念ですが、全車がQ2に進めるレベルの力があったと思っています。この状況には非常に満足しています」

「もちろんトヨタやホンダが勝つレースもありましたから、完璧なレベルに達しているとは言えませんが、先代のモデルよりははるかに良くなっていると思います。来年は空力や車体(開発)が凍結されるので、我々はエンジン性能やドライバビリティ、シャシーのセッティングに関して継続的に取り組むことになります」

 またライバルメーカーも、Zの空力バランスを評価している。HRC(ホンダ・レーシング)でNSX-GTの車体開発を率いる往西友宏は次のように分析した。

「Zのオールマイティさが特に出ているのは、直線がどこのコースでも十分速いのに、コーナリングやブレーキング勝負のサーキットに行っても弱みを見せないという点です」

「スープラが投入された初年度などは、わりとキャラクターがはっきりと出ていて、ストレートのある富士では強いけど、もてぎではNSXも十分戦えるといったように、得意不得意がありました。Zはそこのバランスが良く、不得意な部分が表に出ないので、ドラッグ(空気抵抗)を増やさずに必要なダウンフォースを出せているのだと思います」

「ベース車両が変わるタイミングで、Zをチョイスしたことがうまく作用したのだと思います。我々もずっとNSXでやっていると、どうしてもドラッグやバランスが頭打ちになってしまいますが、ずっと使っていたGT-RからZに変わるタイミングでブレイクスルーがあったのだと思います」

 一方、エンジンパワーの向上も間違いなく躍進の要因のひとつだという意見も聞かれる。17号車Astemo NSX-GTを担当する田坂泰啓エンジニアは、第8戦のレース中に17号車が12号車Zをヘアピンで交わしたにもかかわらずバックストレートで抜き返されたことを引き合いに出し、「やっぱりまっすぐが速いなと思いました」と一言。やはりZは空力バランスが良いと思うかと問うと、彼は次のように答えた。

「単純にパワーが良いんじゃないかと思います」

「例えば富士で250km/hから先でトヨタ(GRスープラ)が伸びるのを見ると、ドラッグが少ないのかなと思いますが、今回はもてぎの短いストレートで抜かれましたからね。そうなると空力もドラッグもあまり関係ありません。馬力じゃないですかね」

「日産は頑張ったんだと思います。(かつて17号車のドライバーだった)バゲットに聞いたら『日産は真っすぐが速いから楽だ』と言っていましたしね」

 ホンダ陣営がアドバンテージとしていた燃費面でも肉薄するなど、様々な面で改善を見せた今季の日産陣営。来季もオールマイティな強さを発揮し、日産がシーズンを席巻できるのか。ライバルであるホンダとトヨタが来季に向けてどのようなアプローチで開発を進め、それに対抗していくのかも注目だ。