シグナテック・アルピーヌでエグゼクティブ・ディレクターを務めるブルーノ・ファミンは、2024年シーズンからFIA世界耐久選手権(WEC)のハイパーカークラスに投入するLMDh車両に搭載されるパワーユニットのベースとして1.6リッターV型6気筒エンジンをベースに採用するという選択肢は、コストと複雑さの理由から「全く考慮されなかった」と明かしている。

 そしてF1用V6エンジンの代わりに、LMDh車両に必要な走行距離とパワーを満たすエンジンを開発中だと説明している。

「マイレージはほとんど変わらない。F1のように1シーズンのエンジンは3基までというルールがあれば、それでも良かったのだけどね……」

 ファミンはmotorsport.comに対してそう語った。

「しかし、我々は500Kw以上(680ps以上というLMDh車両の目標出力)を、設計やメンテナンスの面ではるかに簡単で安価に実現する方法を見つけられたのだ」

 またファミンは、2021年10月に発表されたLMDhプログラムの開発は進行中であり、ルノーがF1エンジンを設計・開発しているフランス・パリのヴィリー・シャティヨンのファクトリーではLMDh用エンジンがテストベンチに載せられていると明かした。

「コンセプトはかなり前に確定していて、すでにテストと開発を進めている」とファミンは言う。

「すでにかなりの時間をテストベンチでも費やしていて、かなり順調に開発は進んでいるので、我々としてはかなり満足している」

 そうファミンは語る一方で、エンジンの技術的な詳細について、それが新開発のレーシングエンジンなのか、それとも市販エンジンをベースにしたものなのか、一切明かすことはなかった。

 なお、アルピーヌはシャシーコンストラクターであるオレカと共同で開発しているLMDh車両の実車テストの開始時期についても詳細を明かしていない。

「我々はそれについてあまり情報を明かしてこなかったが、我々の目標は2024年シーズン開幕までに十分なテストを行なうべく、できるだけ早くマシンをコースに出すことだ」

 そうファミンは語った。

 オレカは、アルピーヌ・シグナテックが2シーズンに渡りWECハイパーカークラスに参戦させてきた『A480』の前身であるLMP1クラスのレベリオン『R13』の設計・開発も行なってきた。

 LMDh車両開発では、オレカはアキュラ『ARX-06』の設計・開発も担当しており、こちらのシェイクダウンを今年の夏に終えたばかり。そのためアルピーヌの手にLMDh車両が渡るのは、まだ先になると示唆しており、LMDh車両のデビュー元年である2023年から1年遅れての投入はオレカの開発キャパシティによるものだと説明している。

「オレカはふたつの(設計・開発)プログラムを同時にマネージメントすることはできなかったし、彼らはアキュラを完成させたばかりだ」とファミンは言う。

「現時点で我々は共にマシンを開発しているが、もちろん、サーキットに持ち込むまでには数ヵ月かかる」

「プロジェクトはスケジュール通り、全てが順調に進んでいる」

 そして、アルピーヌのローラン・ロッシCEOは以前、LMDh車両の開発にイギリス・エンストンを拠点とするF1チームのリソースを活用する可能性を示唆していたが、ファミンはこれを否定している。

「LMDh車両のレギュレーションは、空力性能に関して言えばそれほど野心的なモノではない。だから空力に関しては、最新かつ最先端の技術は必要ないのだ」

 そうファミンは言う。

「我々がもたらすことのできる付加価値は、パワーユニットの開発やエネルギーマネジメント、ハイブリッドシステムがマシンに与える影響にあると思う」

「これはヴィリーのファクトリーにあるノウハウだ。ただもっと必要になれば、エンストンの設備を使えばいい」

 なお、ファミンはアルピーヌのLMDh車両がWECとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(IMSA)の両方でホモロゲーションを取得することを認めた。これにより、2024年以降IMSAのGTPクラスにもマシンを投入できる可能性が出てきたと説明している。

「我々は喜んでマシンを販売するし、仮にアメリカにカスタマーチームができれば、それはとても嬉しいことだ」