F1フリー走行の“ルーキー起用義務”が導入された2022年シーズン。金曜日の顔ぶれをフレッシュにした新規則は成功だった?
その結果として、2022年は多くの“ルーキー”がこの制度を活かしてフリー走行に登場することとなった。ただ前述のような規定となっているため、既にF1デビューを果たしているドライバーも“ルーキー”の枠でフリー走行を走った。
ハースのピエトロ・フィッティパルディはそのひとり。彼は2020年にF1デビューを果たしているが、代役として2戦に出走したのみであったため、“ルーキー”としての要件を満たしていた。
またアルファロメオはレギュラードライバーの周冠宇(アルファロメオ)がルーキーだったため、形式上は周が第1戦と第2戦のフリー走行に参加した時点で上記の若手ドライバー起用義務を消化する形となった。
つまりアルファロメオはシーズン中にレギュラー以外のドライバーをフリー走行で起用する必要はなかったのだが、ベテランのロバート・クビサを4度走らせた。これはレギュレーションとは全く関係がなく、チームとの契約によるものであった。その他にルーキー以外のドライバーを金曜日に走らせたのはハースで、アントニオ・ジョビナッツィを起用した。
一方、ルーキードライバーの中で最も多くの経験を積んだと言えるのが、ニック・デ・フリーズだ。アルファタウリから2023年のF1フル参戦デビューが決まっている彼は、2022年シーズンに4度フリー走行を走った。
さらに特筆すべきは、デ・フリーズがメルセデス、アストンマーチン、ウイリアムズという3チームで公式セッションを経験したこと。そしてポストシーズンテストにはアルファタウリから参加しており、2022年だけで4チームのマシンをドライブしたことになる。サンパウロGPで体調を崩していたマクラーレンのランド・ノリスがセッションを欠場していれば、5チーム目のドライブも実現していたかもしれない。
ローガン・サージェントもデ・フリーズ同様に4度フリー走行に出場しているが、彼の場合はウイリアムズのみでの出走。これは2023年にサージェントをレギュラーとして起用したいウイリアムズが、サージェントに少しでもスーパーライセンスポイントを稼がせるために講じた措置だ。
その他のドライバーに目を向けると、リアム・ローソンがレッドブルとアルファタウリから計3セッション出走。ロバート・シュバルツマン(フェラーリ)、ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)、フィッティパルディ(ハース)は2回の出走、ユーリ・ヴィップス(レッドブル)、アレックス・パロウ(マクラーレン)、パトリシオ・オワード(マクラーレン)、フェリペ・ドルゴビッチ(アストンマーチン)、テオ・プルシェール(アルファロメオ)は1回の出走であった。
また多くのチームは、ルーキーの走行をシーズン終盤に集中させた。前半11レースで金曜にルーキーを走らせたのは、レッドブル(ヴィップス)とウイリアムズ(デ・フリーズ)のみ。シーズン後半に入っても多くのチームがルーキー起用義務の“負債”を抱えたままであり、終盤4戦でその返済に追われることとなった。
そのため、第19戦アメリカGPと第20戦メキシコGPの金曜日にはそれぞれ5人の非レギュラードライバーが参加。最終戦アブダビGPでは、実に8チームがレギュラー以外を起用するに至った。
なお、この義務は2023年シーズンのスポーティングレギュレーションにも記載される。各チームは同年の選手権において、各車両あたり1回ずつルーキードライバーをフリー走行で起用しなければならない。つまり各チームは、シーズン中のフリー走行でレギュラードライバーを1回ずつ休ませる必要があるのだ。
ただマクラーレン、アルファタウリ、ウイリアムズは状況が異なる。彼らにはそれぞれオスカー・ピアストリ、デ・フリーズ、サージェントというルーキーがおり、彼らが開幕戦のフリー走行に参加した時点で義務の一部を果たせることになる。
このように、近年稀に見るほどに多くの若手ドライバーがF1公式セッションに参加することができた2022年シーズン。少なくともシーズン終盤は、レースウィーク初日に新鮮な顔ぶれが見ることができた。現行マシンでのテストが厳しく制限される昨今において、このような制度は非常に貴重と言えるだろう。