F1は2022年から2025年まで、F1のパワーユニット(PU)は開発が禁止され、仕様が凍結されている。しかし2022年シーズンには、合計36回のコンポーネント交換によるグリッド降格ペナルティが科された。これは、使用可能コンポーネント(PU、エキゾースト、ギヤボックス含む)を全ドライバー合計で137基上回ったということを意味する。

 このデータは、開発が凍結されたとはいえ、各PUメーカーが信頼性を確保するのに依然苦しんでいるということの証拠と言えるだろう。

 最も多くグリッド降格ペナルティを受けたのは、アルファタウリの角田裕毅だった。角田は3レースでグリッド最後尾もしくはピットレーンからのスタートを余儀なくされることになった。それ以外にも、ギヤボックス交換により5グリッド降格ペナルティを受けたり、5回の叱責処分を受けたことによる10グリッド降格受けるなどした。

 シーズン序盤はタイトルを争うとみられていたフェラーリのシャルル・ルクレールも、PUの信頼性に足を引っ張られた。カナダとベルギーではグリッド最後尾からのスタートを余儀なくされ、アメリカGPでも10グリッド降格ペナルティを受けた。またルクレールのチームメイトであるカルロス・サインツJr.も、フランスとイタリアで最後尾スタート、サンパウロでも5グリッド降格を科された。

 アルピーヌのフェルナンド・アロンソとエステバン・オコンは、いずれも2回ずつ最後尾グリッドからのスタートとなり、さらに5グリッド降格ペナルティも受けた。

 2022年のワールドチャンピオンに輝いたレッドブルのマックス・フェルスタッペンは、最後尾グリッドからスタートしたのは1回のみで済んだ。それはベルギーGPのことだったが、レースでは圧倒的な速さを見せて次々とライバルをオーバーテイク。結果的には優勝を手にしている。イタリアGPでも5グリッド降格となったが、これもやはり優勝まで挽回している。

 各PUメーカーが最も苦労したのがICE、つまりエンジンである。20人のドライバー中実に15人が、このICEを制限数を超えて使うことになった。シーズン中、各ドライバーは3基のICEを使うことが許されていたが、実に7人が制限数の倍にあたる6基のICEを使った。

 ターボチャージャーとMGU-Hも、20人中14人が制限数を超えた。これもシーズン中に3基まで使うことができたが、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は7基のターボチャージャーとMGU-Hを使っており、いずれも全ドライバー中最多である。

 ただ多くのドライバーがグリッド降格ペナルティを受けた一方で、一度も降格ペナルティを受けることなく、シーズンを乗り切ったドライバーもいる。

 アストンマーチンのセバスチャン・ベッテルとランス・ストロールは共に、完全に制限内のコンポーネント数でシーズンを走り切った。ウイリアムズのふたりも同様だ。さらにマクラーレンのダニエル・リカルドも、PU交換によるペナルティを受けなかった。

 お気付きのように、これらはいずれもメルセデスのPUを使っていたチーム/ドライバーたちである。ワークスチームのルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルは、いずれも1回ずつペナルティを受けているが、その信頼性は他メーカーよりも高いと言えるだろう。

 来る2023年、メルセデスのマシンパフォーマンスが復活し、タイトル争いに加わるようなことになれば、こうしたPUの非常に高い信頼性は強力な武器になるかもしれない。