アレックス・リンスはホンダとの2年のファクトリー契約を結び、MotoGPを2022年末限りで撤退したスズキから、ホンダのサテライトチームであるLCRへ加入することとなった。

 ただそのホンダは、2022年シーズンに3年で2回目の未勝利シーズンを過ごしており、エースのマルク・マルケスを始め所属ライダー全てが、マシンからパフォーマンスを引き出すことに苦戦していた。2022年11月にバレンシアで行なわれたポストシーズンテストでは、ホンダ初走行のリンスは20番手。ペースでは1.1秒遅れという結果だった。

 しかしリンスは、ホンダ『RC213V』は「それほど悪いバイクとは感じなかった」と語っている。

 motorsport.comスペイン版のポッドキャストに登場したリンスは、ホンダ初走行を次のように振り返っている。

「ホンダについて初めて表立って話ができるから、君はラッキーだよ。これは僕の人生の新章の訪れを意味しているし、僕も話せてハッピーだよ」

 リンスは開口一番にそう言った。

「スズキとは全く違うバイクだから、複雑な気持ちというのが正直なところだ」

「でも、それほど悪いバイクだとは思わなかったんだ」

「一番難しいと感じた点は、エンジンのレスポンス、アクセルからパワーやリヤホイールへの滑らかな繋がりだ。(パワーが)低速域だとなくて、高速域に沢山振られている感じなんだ。僕らはそれに適応していくんだ。僕はまだコツを掴みきれていないけどね」

「でもバイクは気に入っているんだ。1位とは1.1秒差で僕は前に行けなかったけど、少なくともバレンシアや、レース中やその後の状況でも、僕の体力的にはあまり問題ないように思えた」

「僕にとっては、簡単に乗れるバイクじゃないみたいだ。でもバイクは全て難しいモノだし、十分なポテンシャルはある」

 リンスのこれまでのMotoGPキャリアはスズキ一筋。初めて他メーカーのMotoGPマシンでレースをすることになるが、RC213Vをスズキ『GSX-RR』に近づけるような開発の舵取りを行なうことはないと断言している。

「他のバイクでの経験があってもなくても、ホンダに来るという点では同じ出発地点にいると思うんだ」

「もちろん、スズキの方がコーナリングは良かった。でも、6年間同じバイクに乗ってきたという事実は変わらないし、僕は今ホンダに乗っている。他のバイクでの経験がないことで、後れを取ることはないよ」

「新しいバイクに慣れるには、何時間もかかる。今年の1月には、ホンダの1000cc(の市販バイク)でサーキットトレーニングを何回かやる予定だ。そのバイクで何時間走っても、レース用バイクとは似て非なるモノなんだ」

「結局は、MotoGPバイクは唯一無二で、そのバイクで行なったことを他で再現するのはとても難しい」

「ホンダの人には『スズキのバイクをコピーするのは僕の考えとは違う』と言ってある」

「ホンダには悪いところもあるけど、良いところもある。スズキでどうやっていたかは常に伝えるようにしているけど、あのようなバイクを僕が作っていくという訳ではなく、全ての情報をテーブルの上に挙げるという意味でやっているんだ」

 リンスの他に、スズキでコンビを組んだジョアン・ミルもホンダ陣営に加入。今後2シーズンは、ファクトリーチームとなるレプソル・ホンダでマルケスと共にMotoGPを戦うことになっている。

Additional reporting by Oriol Puigdemont.