メルセデスのジョージ・ラッセルは2022年シーズンについて、時折「ルーキーのような」感覚を覚えることもあったと振り返っている。

 ウイリアムズで2019年にF1キャリアをスタートさせたラッセル。ウイリアムズは2018年から2020年まで3年連続でコンストラクターズランキング最下位を記録するほど低迷しており、ラッセルは若手ながらもチーム再建を担うこととなった。その成果は2021年に現れ、ベルギーGPでは2位表彰台を記録。チームをランキング8位にまで押し上げた。

 そして2022年は、過去に8度のコンストラクターズタイトルを制したメルセデスワークスに晴れて加入することとなったラッセル。”常勝軍団”への加入という予想されたシナリオとは異なる一年となったものの、チームメイトで7度のF1世界チャンピオンでチームメイトのルイス・ハミルトンをドライバーズランキングで上回り、チームにシーズン唯一の勝利も手にした。

 しかしラッセルは、新天地に慣れると共に、レースの週末におけるレース運営を理解する必要があったと2022年を振り返っている。

「このチームの作業レベルから、ある意味2022年シーズンはちょっとルーキーみたいな気分だった。これまでF1で話したことがなかった内容の話をしているんだ」

 ラッセルはシーズン終了後に、motorsport.comを含む一部メディアにそう語った。

「だから、レースの週末におけるチームのプロセスや、セットアップの面でどうマシンを速くできるのかを理解するのに時間がかかった。それがシーズン序盤、少しルーキーみたいに感じさせた理由だ」

「史上最高のドライバーであるルイスとチームメイトになったことで、彼から学んだことはたくさんある……正直なところ、コース外での彼のエンジニアたちに対する振る舞いや、ビジネスに対する姿勢とかね」

「でも、それと同じようにコース上での細かな動きも、僕にとってはかなり印象的だった」

「でもF1世界チャンピオンになるためには、ベストを尽くして、全ての人に勝たなければならない。ルイスが僕のベンチマークになってくれる……なんて恵まれたポジションに僕はいるんだろうか」

 ラッセルは2022年シーズン開幕から16戦中15戦でトップ5フィニッシュを記録し、ハンガリーGPでポールポジションを獲得。サンパウロGPでは土曜日のスプリントレースと日曜日の決勝レースを制した一方、ミスも目立った。

 シンガポールGPではバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)やミック・シューマッハー(ハース)と接触するなど精彩を欠き、アメリカGPでは決勝スタート直後にカルロス・サインツJr.(フェラーリ)と交錯。メキシコシティGPでは、ミスによりポールポジション獲得の機会を逃した。

 これらの出来事は”頑張りすぎた結果”によるものなのか、そうmotorsport.comが尋ねるとラッセルは次のように答えた。

「ああ、結局は経験によるモノだと思う」

「このスポーツでは、どれだけ激しく攻めるかの明確な限界がある。流れに身を任せるしかないんだ」

「怒りに任せてマシンを走らせたいところだけど、それが最速の方法ではなないこともある。僕が言った通り、それは経験によるモノだ」

「99%の力で走れば、101%で走るよりも良いパフォーマンスが得られると常に思っているんだ。101%だと崖っぷち……限界を越えてしまっているんだ」

「99%で走るなら、タイムシートの上で0.01秒失うだけで済むけど、101%で走れば、マシンを失うかクラッシュしてしまうんだ」

「100%ピッタリで走りたいけど、101%になってしまうこともある。それも経験だ」

「メキシコではポールポジションを掴むために走ったけど少しミスをして、失ったタイムを挽回することができなかった。できる限り速く走ろうとしていたから、ラップを台無しにしてしまうのは避けられないことだった」

「またオースティンでは、僕は必ずしも頑張りすぎていたとは思っていないんだ。ただの不運か、ちょっとした判断ミスだと思っている」

「詰まるところ、僕はあのコーナーで前に出ようとしていたんだ。カルロスがアウトから回り込んでくると予想していたけど、彼は僕のイン側に入ってきた。その時点でもう手遅れだったよ」

「でも僕はまた、限界へ挑戦して、ある意味ルーキーに近い感覚へと戻ろうと思っているんだ」

「初めて上位を走っているんだ。後方を走っている時とは全く違うよ」

「ターン1へのアプローチの仕方が全然違うんだ。15台が前にいる時のアコーディオン現象よりも、数台が前にいる時の方が良い」

「15台の後ろにいる時は、3台の後ろにいる時よりも乱気流も多い。僕は3年間後方でレースをしてきたけど、上位でのレースはまだ20戦しかしていない」

「後方を走った時に学んだのと同じように、上位勢特有の雰囲気を学ぶんだ」