2023年シーズンにアルファタウリからアルピーヌに移籍することとなったピエール・ガスリーは、フランス籍のチームへの移籍が議題に上がった際、亡き友アントワーヌ・ユベールとアルピーヌ/ルノーとの深い繋がりを「真っ先に思いついた」と語っている。

 ユベールは、2018年にGP3(現FIA F3)でタイトルを獲得した後、翌年にはFIA F2へ昇格し、ルノーの若手ドライバープログラム(現アルピーヌ・アカデミー)の筆頭として類まれなる才能を発揮していた。

 2019年のF2ではアーデンに所属し、モナコ戦とポール・リカール戦で勝利を挙げたものの、スパ戦のフィーチャーレースで発生した事故によりこの世を去った。

 ガスリーにとってユベールは、フランスモータースポーツ連盟(FFSA)が若手ドライバー育成支援のために設立した学校に共に通い、ジュニアカテゴリーを共に駆け上がった竹馬の友であった。

「アントワーヌはアルピーヌのドライバーだったし、フランス人ドライバーだった。彼はアカデミー内でとても好かれていたことも知っている」

 ガスリーは2022年シーズン終了後に行なわれたmotorsport.comのインタビューでそう語った。

「僕らドライバーの間では、アルピーヌがフランス人ドライバーをトップレベルに持ってくることに熱心だというのは知られた話だった。そして彼はF1への道を歩んでいたんだ」

「もちろん、これ(移籍)が起こった時にそのことを考えたのは確かだし、彼の家族のことも考えた。この移籍は、とても良い話だと思ったんだ」

「いつも言っていることだけど、僕とアントワーヌはF1へ行くという共通の夢を持っていた。そして彼はアルピーヌで走る夢を持っていたんだ」

「もし僕の人生の中で、さらにアントワーヌを偲ぶ何かを達成できたら、素晴らしいことだね」

 アルピーヌに在籍していたフェルナンド・アロンソが引退したセバスチャン・ベッテルの後任としてアストンマーチンへ電撃移籍したことから、大きなシャッフルが起きた2023年のドライバー市場。その結果、ガスリーはアルファタウリ/レッドブルとの契約を1年早く終了させる形でアルピーヌへ移籍した。2023年はフランスメーカーで同郷エステバン・オコンとコンビを組み、”オールフランス”で新シーズンを迎えることとなった。

 アルピーヌへの移籍が決定した際、ガスリーはユベールの家族にメッセージを送り、オフシーズンを共に過ごしたいと伝えたという。

「後々話すつもりだけど、彼の母に話したい逸話がいくつかあるんだ」とガスリーは言う。

「その話がいつも僕の胸の内にあることだというのは確かだね」