ニコ・ヒュルケンベルグは2023年、ハースからF1復帰を果たすことになった。ルノーに在籍していた2019年以来、実に3年ぶりのF1フル参戦ということになる。

 ヒュルケンベルグはしばらくF1の表舞台から離れていたことについては前向きに捉えており、過去を振り返り、反省するのにいい時期となったと明かした。

 ルノーF1のシートを失った後、ヒュルケンベルグはレーシングポイントとアストンマーチンでリザーブドライバーを務めてきた。この間、新型コロナウイルスに感染して欠場したセルジオ・ペレスやランス・ストロール、そしてセバスチャン・ベッテルの代役として合計5レースに出場。急遽の登板ながら印象的な活躍を見せ、それがハースのレギュラーシート獲得に繋がることになった。

 そのヒュルケンベルグ曰く、ルノーのシートを失った後は、頭の中を整理する絶好のチャンスだったという。

「僕にとっては、とてもポジティブなモノだった」

 ヒュルケンベルグはmotorsport.comにそう語った。

「もちろん、僕は自分のケースについてしか話すことはできない。でも、2019年はずっと素晴らしい状況ではなかった。その時点で、一旦離れたいと感じるようになった」

「そして一歩離れてみると、物事がどのように進んでいったか、何をしたのかということについて、それまでとは異なる理解と新しい視点が生まれるんだ」

「多くのことをしっかりと考え、全てのことを処理する。冬のオフが3ヵ月もあるなんて長いと、皆さんは思うかもしれない。でも、実際にはそうじゃないんだ。オフの間にもチームと連絡を取って、仕事をしている。だからF1を離れていた時間は、僕のことを大いに助けてくれたと思う」

「その間に、僕は結婚して父親になった。つまり、色々なことが起きたんだ。普通の人生に起きるようなことがね。F1から離れたことで、僕は普通の人生を送った。逆を言えば、F1に関われば、誰もが人生に影響を受けるということだ。今回は、完全にF1と断絶する時間を得ることができた」

 ただヒュルケンベルグは、アストンマーチンでリザーブドライバーを務めたことで、大きなプレッシャーを受けることなく、F1に関わり続けることができたと語った。

「以前の仕事とは、大きく異なる役割だった」

 リザーブドライバーを務めたことについて、ヒュルケンベルグはそう語った。

「サーキットに行ってマシンに乗らず、毎日パフォーマンスを発揮する必要がないという状況は、以前とは大きく異なる感覚なんだ。マシンに乗って、悪い結果となった日々がなくなるわけだから、かなりリラックスできる」

「その観点から言えば、リラックスしているけど、同時にレースから得られるモノ……例えば興奮やスリルなんかを逃すことになった。それてそれは、僕に戻りたいという感覚を植え付けた。今では、もう少しF1で走りたいと思っている」

 ヒュルケンベルグは、レギュラードライバーから離れていた時間は、自分のキャリアやこれまでの選択を振り返るための良い機会になったとも認める。

「後から考えれば、もっと良くできたと思うことがある。だから、やり直せるならば、いくつかのことを別の形でやっただろうと思う。でも、過去に拘っても意味がない。そこから学び、将来修正できるように努力し、正しいことを行なっていくんだ」

「今回F1から離れたことは、色々なことを振り返ったり、別の角度から物事を見たりして、将来の振る舞い方を変えられることが確かにある。細かい部分は話したくないけど、とても個人的なモノもある」

「率直に言って、トップチームに入るための最後の一歩を踏み出す上で、必要なチャンスを逃した部分もいくつかあった。それは事実だ。でもハースは、何らかの理由で僕を求めた。彼らは僕のことを、クオリティの高い”素材”だと、まだ信じているんだと思う」