2022年からF1のパワーユニットは、開発が凍結されている。そんな中でフェラーリは、このオフの間に30馬力パワーアップしたのではないかと言われているが、新たに同チームの代表に就任したフレデリック・バスールは、それはあくまで噂であり「冗談だろう」と語った。

 開発が凍結されるのに向け、各パワーユニットメーカーは、できる限りパフォーマンスを向上させることに焦点を当て、2022年シーズンに挑んだ。その反面、信頼性を犠牲にすることになったが、信頼性を向上させるための開発はレギュレーションによって認められているため、その選択肢をとることができたのだ。

 特にフェラーリとアルピーヌ(ルノー)は、長期的なことを考え、信頼性は二の次にして、パフォーマンスを限界まで高めたことを認めている。

 ルール上、信頼性を向上するための変更は可能だが、パフォーマンス向上を狙った直接的なアップデートは不可能であることを理解していたからだ。

 2022年シーズン中盤フェラーリは信頼性トラブルに見舞われたことで、シーズン終盤には出力をあえて落としてそれをマネジメントしようとした。

 最終戦アブダビGPでは信頼性向上のための調整が行なわれた結果、かなりのパワーを取り戻すことに成功したと考えられており、その価値は15馬力に匹敵すると考えられている。

 さらに冬の間に、フェラーリはPUの耐久性を向上させることでさらに15馬力のパワーを上乗せできるようになったのではないかという憶測も飛び交った。つまりフェラーリは、昨シーズンと比較して30馬力ものパワーアップを遂げるのではないかと噂されているのだ。

 しかし新チーム代表のフレデリック・バスールは、そのような荒唐無稽な主張を一蹴。冬の間に実施されたPUの微調整がパワー向上につながったこともないと話した。

「この数字がどこから出てきたのかは知らないが、冗談のようなものだ」と彼は言う。

「我々はいくつかステップを踏んだが、それはあくまで信頼性に関するモノだ」

「昨年のエンジンパフォーマンスは全く問題ではなかったと思う。問題は信頼性であり、それを解決することが第一の目標だ」

「今のところは問題なさそうだ。しかし、トラック上ではまた違う側面の現実が見えてくる」

「チームが苦しんだ問題はいくつかあったと思うし、それはフェラーリに限ったことではない。それはコースでのオペレーションやバウンド、振動から来ている。2週間と少し後のバーレーン(テスト)では、誰もがもっと良いイメージを持てるようになるだろう」

 フェラーリPUの進歩に関するバスールのコメントは、ルノーのF1エンジン責任者であるブルーノ・ファミンが、信頼性のアップデートがパフォーマンス向上のための”裏技”ではないことを確認するためにFIAが厳しく取り締まることを期待していると述べたことを受けたものだ。

「2022年はかなり寛容だった」とファミンは語った。

「我々だけでなく、異なるメーカーから30、40、50、60、70のリクエストがあり、誰もがこの種の問題の影響を受けていたのだから」

「FIAが今後、もう少し(対応を)強化することを期待しているが、情報はない」

 さらに彼は、「純粋な信頼性の問題とは何か?」と付け足した。

「信頼性の問題の背後には、もちろん潜在的な性能向上がある場合が多いので、答えようがないんだ。その限界は、必ずしも明確ではない」

「2022年の我々のようにウォーターポンプに問題がある場合、それは純粋な信頼性の問題であり、ウォーターポンプを交換しても何も得るものがないことは明らかだと思う」

「しかしもしピストンリングの材質を変える必要があったとしたら、もっと強くもっと性能を上げることができる、となるとその限界はどこなのか? それは明確じゃないんだ」