昨年10月のNASCARマーティンズビル戦でロス・チャステインによって披露された超絶プレイは、海を越えて世界中の人々に衝撃を与えた。チャステインはプレイオフレースを生き残るため、最終ラップにわざと壁にぶつかり、猛スピードで外壁を滑走することでイン側を走るライバルをごぼう抜きしたのだ。

 しかし、こういった“裏技”はNASCARによって公式に封じられることになった。NASCAR競技部門の代表者によると、これらは安全面を考慮して全てのタイプのサーキットで違反になるという。

 NASCARは先日、チームに対して次のような通達をしている。

「NASCARはルールブックのセクション10.5.2.6.Aに従い、今後あのような動きをする場合は安全でないとみなす」

「競技者が自身や他の競技者、ファンを脅かすような作戦をとらないよう、NASCARはマーティンズビルで行なわれたような安全でない試みをする車両に対してタイムペナルティを科すことになる」

「これは新たに設けられたルールという訳ではなく、安全に関する文言はルールブックに確かに存在している。マーティンズビルの一件の後、様々な検討がなされた結果、2022年の最後のレースまで一貫した裁定がされることになった。シーズン終了後にドライバーやチームとルールの解釈や裁定について最善の方法を議論してきたが、これが今後の安全のためにも正しい解釈だと思っている」

 最終コーナーへの進入で壁にぶつかり、そのままアクセルを緩めることなく5台を追い抜いたチャステイン。ミニ四駆を想起させるような独創的な走りはSNSで1億回以上再生された。何人かのドライバーはこの大胆な行動に拍手を送る一方で、その合法性やいわゆる“パンドラの箱”が開いてしまったことに関する懸念の声もあった。

 チャステインを破って昨年のチャンピオンに輝いたジョーイ・ロガーノも、この行為を禁止すべきだと持論を述べていた。

「正直、あれはすごかったと思う。クールだったし、あんなの初めてだった」とロガーノは言う。

「今はこれを禁止するルールがないが、そういうルールが必要だと思う。というのも、チェッカーが近付いた時に全員が壁に向かっていったらそれはどうかと思うからだ」

「ドライバーにとってもファンにとっても、マシンを壁際に寄せてゴールまで運ぶのが安全かどうか分からない。フェンスやゲートが完全に閉まっていなかったら? マシンがそこに引っかかってしまったら? ロスはそういったリスクを負ったんだ」