F1メカ解説|メルセデス、開幕戦バーレーンGPに低ダウンフォース仕様のリヤウイングを投入。これまでとアプローチを変えた?
2022年のメルセデスは、ポーパシングやバウンシング、そしてダウンフォース不足に見舞われ、不振の1年を過ごした。それだけでなくメルセデスのマシンW13は、ストレートスピードの面でもライバルの遅れをとった。
チームは空力効率を改善しようと、熱心に作業を続けてきた。しかし先日行なわれたバーレーンでのプレシーズンテストでは、劇的な進歩は遂げていないように見えた。
テストでメルセデスは、ハイダウンフォース仕様に見えるリヤウイングを使っていた。そのことは、確かに最高速不足だった理由のひとつであるだろう。実際ライバルチームの多くは、メルセデスとは大きく異なる空力パッケージで、テストを走ったからだ。
しかし開幕戦バーレーンGPに持ち込まれたW14には、低ドラッグ仕様のリヤウイングが取り付けられていた。
ただこのリヤウイングについてハミルトンは、大きな違いを生み出すモノではない」と語っている。
「今回持ち込んでいるモノに関して言えば、僕らには試す予定のウイングがある。このサーキットにより適したモノになることを願っているよ」
「でも、それで全てが変わるとは思わない。でもうまくいけば、僕らは正しい方向に押し進めてくれるだろう」
シーズンの早い段階でこのような低ダウンフォース仕様のリヤウイングを使うということは、メルセデスの方針の転換を示している。
昨シーズン、W13ではマイアミGPまで異なる仕様のリヤウイングを投入せず、代わりに空気抵抗を削減するため、フラップの後端をカットして前面投影面積を減らした。しかし今回は、まったく新しいリヤウイングを投入したのだ。
メルセデスが今回投入したのは、メインの写真の通り、リヤウイングのメインプレーンが中央部分が厚く、両端が薄いというモノだ。いわゆる、スプーン形状と言われるものである。
スプーン形状のリヤウイングメインプレーンは、中央の厚い部分で多くのダウンフォースを発生し、それでも空気抵抗が大きくなりすぎないように翼端部分が薄くなっている。これは、レッドブルがよく使ってきたデザインに似ている。
一方フラップの前端も、中心に近い部分は厚くなっており、翼端に向けて薄くなっているようだ。また翼端板の角後端には切り欠きが設けられ、このエリアで生み出される乱流を制御している。
2022年、メルセデスは翼端板の角に、交換可能なパネルセクションを設け、パフォーマンスの調整に役立ててきた。こうすることで、ウイング全体を交換するのではなく、パネルの変更のみでパフォーマンスを瞬時に変更することができるのだ。
前述の通り、ハミルトンはこのウイングが、勢力図を変える要因になるとは考えていない。そのハミルトンのコメントも含め、チームはシーズンインに向けて慎重な姿勢を崩していない……今季のメルセデスは、一体どんな戦いぶりを見せるのだろうか?