3月6日、鈴鹿サーキットでスーパーフォーミュラ公式合同テストの初日が行なわれた。トップタイムをマークしたのは選手権を目下2連覇中の野尻智紀(TEAM MUGEN)だったが、彼を含め多くのドライバーが新型車両『SF23』に手を焼いているようだ。

 今季から導入されるSF23は、より接近したバトルを生み出すために先行車両に対する追従性の改善を目指して開発されており、全体的なダウンフォースの総量は減る傾向にある。

 しかし、テスト初日に野尻がマークしたタイムは1分35秒955。先代『SF19』時代の昨年に野尻が記録したポールタイムが1分36秒フラットであることを考えても、今回のタイムはそれと遜色ないものだ。1.5秒〜2秒ほどタイムが落ちると聞かされていたという佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)も「フィジカル的にも楽になるのかと思っていたら、変わりませんでしたね」と苦笑する。

 しかし、テスト初日を終えた野尻はその仕上がりについて「まだ50点くらいという感じですね」と語る。35秒台のタイムが出たのはあくまで気温の低い夕方(17時ごろ)だったからであり、根本的なマシンバランスには苦慮しているようだ。

「クルマのバランスとしては、ダウンフォースが圧倒的に足りない状態で走っていました」

「SF23はどこかで何かしら(空力的に)不安定なポイントが出てきてしまうのではないかと思います。去年の僕のクルマはそういうポイントがなく、修正舵がほとんどない状態で走れていました。速いクルマを作るという上では、そこに持っていきたいですが、エアロマップを見ているとなかなかそうはならないんじゃないかと思います」

 昨年ランキング3位の平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)も、5番手に入ったものの新型車両のエアロバランスに苦闘しているひとり。彼は「クルマも決まっていなかったのでタイムを気にする余裕はありませんでした。バランス的には全然悪いという印象で、もう少し煮詰める必要があります」と語る。

 SF23はダウンフォースの総量が減った中で、フロントに比べてリヤのダウンフォースが少ないオーバーステア的な傾向だと分析するドライバーもいる。実際にテスト中は多くのマシンがリヤを滑らせているシーンが見られた。TGM Grand Prixの大湯都史樹も「最初の方は軽いどころではなかったですね(笑)」と話す。またよりフロアに依存した空力特性ということもあってか、「ボトミングした時などにダウンフォースが抜ける量が多い印象(平川)」といった意見も聞かれた。

 また追従性に関しては、初日の段階で追走をしていたドライバーが少なかったことから、多くのフィードバックは得られなかった。一部ドライバーは追従性が改善されるのではと話していたが、野尻はある懸念を覚えたという。

「1コーナーなどのハイスピードコーナーでは、コーナーに入っていく瞬間は良いのですが、低速域ほどリヤ(のダウンフォース)がなくなったりします。その特性が本当にバトルを生みやすくするのかは個人的に疑問です」

「誰かの後ろについた時のダウンフォースの抜けが少なくても、そもそもの総量が少ないので、トラクションに繋げられないということが考えられます。嫌がられるかもしれませんが、誰かの後ろについて走るようなテストも残り1日でやりたいですね」

 このように大きく空力特性が変わったことで勢力図にも変化が起こる可能性は十二分にある。昨年ランキング4位と活躍した宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)も、現状では適切なセットアップを見つけることに苦労しているようで、テスト初日はアタックラップを敢行しながらも14番手にとどまった。

「SF23になってどうですかと聞かれても、正直よく分からないというか……今は悩んでいるということもあって良い印象はないですね」と宮田は浮かない顔で話す。

「エアロバランスと、それに伴ったセットアップが見つかっていない気がします。そこはしっかり見つけないといけないと思います」

 スーパーフォーミュラを早速色んな意味で掻き回しているSF23。開幕に向けて、残されたテストはあと1日しかない。