ジュリアーノ・アレジ、スーパーフォーミュラ残留の裏にあったトムスの思い「“スター”がいないと日本のレース界が下火になってしまう」
デビュー2戦目となった2021年オートポリス戦で雨の中ポールトゥウィンを飾るなど、来日当初から鮮烈なインパクトを残したアレジ。初年度は代役として5レースに出走したランキング11位となったが、フル参戦初年度の2022年は大苦戦。第2戦富士での8位が唯一の入賞となり、シリーズランキングは20位に沈んだ。
そして2023年からは、笹原右京がホンダ陣営からトヨタ陣営に移籍。アレジが所属するトムスは、昨年12月の合同/ルーキーテストでアレジと笹原に36号車をシェアさせた。その際笹原のパフォーマンスやフィードバック能力を非常に高く評価していたトムスだったが、結果的に彼らは2023年も宮田とアレジのコンビを継続することを発表した。なおスーパーGTにおいては、アレジと笹原が37号車Deloitte TOM'S GR Supraのドライバーとしてコンビを組む。
この判断に至った経緯について、トムスでスーパーGTの37号車やスーパーフォーミュラ・ライツの監督を務める山田淳氏が語った。
山田氏曰く、アレジ残留の決定にはチーム監督・オーナーである舘信秀氏の意向が強いという。舘監督はマクロな視点で国内モータースポーツ界の未来を考えた上で、アレジを起用するという判断に至ったようだ。
「舘は(モータースポーツ界)全体のことを考えて発言します」と山田氏。
「ジュリアーノのようなスター選手がいないと、日本のモータースポーツ界全体が下火になってしまいます。(アレジと笹原を)比べてどちらが良い悪いではなく、一歩引いて全体を考えた判断だと私は理解しています」
アレジの父は元F1ドライバーのジャン・アレジ、そして母は女優の後藤久美子。日本で高い知名度を誇る両親を持つアレジは一般層へ訴求する力を持っており、実際に地上波テレビ番組などにも多数出演して大衆に露出している。スーパーフォーミュラ、そして国内モータースポーツ業界の人気向上が叫ばれる昨今において、対外的な発信力のあるドライバーの存在は確かに重要だと言えるだろう。
2021年のスーパーフォーミュラ・ライツではランキング2位、同年のスーパーGT・GT300ではarto team Thailandで予選Q1トップタイムを叩き出して見せたアレジ。最高峰カテゴリーにステップアップしてからは少し足踏みしている感は否めないが、今年からは親交の深い片岡龍也氏がアドバイザーとして帯同するなど、さらなる成長が期待されている。
「彼にはやらないといけないこと、課題がたくさんあるので、それをひとつずつ潰していって強いドライバーになってほしいですね」と山田氏は語る。
「片岡とジュリアーノは非常に仲が良いです。片岡は説明が上手なので、ドライビングやクルマの面で直すべきところをしっかり説明してくれています。それもジュリアーノもしっかり受け入れているので、良いコンビネーションを築けています」
「ジュリアーノも今年はだいぶリラックスした状態でテストに臨めていますし、進歩してきているので楽しみです。うちのオーナーが言うように、彼のようなスター選手がトップフォーミュラで活躍することを願いたいですね」