データで見るF1界の“日本対メキシコ”。選手層では日本に軍配も、実績はペレス一強?
野球における日本とメキシコの対戦成績は日本が大きく勝ち越しているようだが、ではF1においてはどうだろうか? 2023年のF1はレッドブル・レーシングにメキシコ人ドライバーのセルジオ・ペレス、アルファタウリに日本人ドライバーの角田裕毅が所属しており、まさに“日本対メキシコ”が繰り広げられているわけだが、今回は歴代データという点からそれぞれの国のF1での活躍を見ていこう。
■過去多くのドライバーを輩出した日本と、“少数精鋭”のメキシコ
まずは両国からF1グランプリに出走したドライバーの数を比較する。予選のみの出走に終わったドライバーなどを除外し、グランプリ決勝を戦ったドライバーに限定すると、歴代の“日本人F1ドライバー”の総数は18人。これはメキシコの6人と比較すると実にトリプルスコアである。
日本人初めてのフルタイムF1ドライバーは中嶋悟で、1987年から1991年の5シーズンに渡って活躍した。フル参戦を経験したドライバーの数は延べ10人で、その中には鈴木亜久里、片山右京、佐藤琢磨、小林可夢偉など、4〜6シーズンに渡ってフル参戦して一定のキャリアを築いた者も多い。そして現在も、角田がF1で3年目のシーズンを送っている。
一方のメキシコは、リカルド・ロドリゲス、ペドロ・ロドリゲスのロドリゲス兄弟が同国におけるパイオニア的存在。しかしその後しばらくは彼らに続くドライバーはほとんどおらず、ネルソン・ピケのチームメイトとしてブラバムでも戦ったヘクトール・レバークを最後に、メキシコ人ドライバーの系譜は30年途絶えていた。
そしてそのジンクスを打ち破ったのがペレス。2011年に小林のチームメイトとしてザウバーからデビューを果たし、今も現役だ。その他2010年代にはエステバン・グティエレスもF1で3シーズン走り、最近ではパトリシオ・オワードがマクラーレンからフリー走行に出走するなど、メキシコ人ドライバーはかつてほど馴染みのないものではなくなっている。
このように、メキシコよりも日本の方がF1で長期間に渡って多くのドライバーが活躍している。しかし実績という点で言えば、ペレスひとりで日本人ドライバー全員のリザルトを上回っている感がある。
■実績は“ペレス一強”のメキシコに分あり。今後は角田の躍進に期待
F1の決勝を走った日本人ドライバー18人の中で、入賞の経験があるのはその半数の8人。いずれもフル参戦経験のあるドライバーだ。そして決勝での最高成績は3位で、1990年日本GPの鈴木、2004年アメリカGPの佐藤、2012年日本GPの小林と、過去3度記録されている。一方予選の最高位は2番手で、佐藤と小林が1度ずつ記録している。
一方メキシコは、日本人のフルタイムF1ドライバーが誕生する遥か昔、1967年の南アフリカGPでペドロ・ロドリゲスが優勝を記録している。彼は表彰台も通算7回獲得しており、この時点で日本人の最高成績を上回っている。
そして何より、ペレスが両国ドライバーの中でも飛び抜けた実績を残している。2011年からザウバー、マクラーレン、フォースインディア(レーシングポイント)といった中堅チームを渡り歩き、その中でも光る走りを見せるドライバーとしての評価を確立。そして2020年のサクヒールGPでは、波乱のレースを制して悲願のF1初優勝を成し遂げた。
この活躍が認められ、ペレスは2021年からトップチームのレッドブル・レーシングのドライバーに。同年は1勝を挙げて年間ランキング4位、2022年は優勝2回、2位7回、3位2回という好成績でランキング3位となった。
そして2023年は先日行なわれたサウジアラビアGPで通算5勝目をポールトゥウィンで記録。“レッドブル一強”の雰囲気が漂う今シーズンだが、今季のペレスからはチームメイトで前年王者のマックス・フェルスタッペンに挑戦し、タイトル獲得を狙わんとする勢いが感じられる。
このように、データから見るF1版『日本対メキシコ』は、実績という点を重視してみるとメキシコに軍配が上がると言わざるを得ない。しかしこの結果をひっくり返す存在となり得るのが角田だ。
角田はレッドブルの育成ドライバーとして下位カテゴリーで好成績を残し、その活躍が認められた結果、レッドブルの下部チーム的存在であるアルファタウリからF1デビューを果たした経緯がある。最近はチーム自体の不振もあって上位争いに食い込めていない角田だが、今季は開幕から2戦連続で11位に食い込み、これはマシンのポテンシャルを限界以上まで引き出した結果だという声も聞かれる。
現在はフェルスタッペン、ペレスという強力なドライバーラインアップを形成しているレッドブルだが、彼らの“秘蔵っ子”である角田がますますその評価を高めていけば、将来のレッドブル入り、そして歴代の日本人最高成績を次々に更新……という未来も十分あり得るだろう。