今シーズン、鳴物入りでF1デビューを果たしたオスカー・ピアストリ。しかし今季のマクラーレンは信頼性の面でもパフォーマンスの面でも苦労しており、ここまで光る走りを見せられていない。しかし1996年のF1チャンピオンであるデイモン・ヒルは、ピアストリが自信を失い、すぐにF1のシートを失うようなことにはならないだろうと考えている。

 マクラーレンは今季開幕から厳しい戦いを強いられている。パフォーマンスの面もさることながら、信頼性の問題にも苦しみ、ピアストリの先輩チームメイトであるランド・ノリスも入賞に至っておらず、コンストラクターズランキングでは最下位に沈んでいる。

 ピアストリはFIA F3とFIA F2をそれぞれ参戦初年度でチャンピオンを獲得して卒業。2022年にアルピーヌF1のリザーブドライバーを務め、契約問題などで混乱しつつも、2023年にマクラーレンからF1デビューを果たした。しかし前述のとおりマクラーレンが厳しい状況となっていることで、前評判通りの活躍を見せることができていない。

 しかし1996年にウイリアムズFW18を駆ってF1チャンピオンに輝いたデイモン・ヒルは、ピアストリが自信を失うようなことはないだろうと語る。

「不安定なスタートを切ってしまった場合、それを取り戻すには1シーズンかかってしまう場合もある。しかし人々は迅速に判断し、兆候を探すことになるわけだ」

「これまで偉大なドライバーたちは、素晴らしい勢いでF1に登場してきた」

「ミハエル・シューマッハーも、マックス・フェルスタッペンも、そしてアイルトン・セナもそうだ。彼らがデビューした時、人々は『彼はどこからやってきたんだ? この男は誰だ?』と言っていたよね」

「オスカーにそういうことができたチャンスがあったとは言えない。でも、彼は間違いなく非常に有能であり、しっかりと仕事をしているように見えた」

「彼は、皆さんが『なんてことだっ! 彼の才能はちょっと疑わしいね』と言うような人物ではない」

 ヒルは、かつて自身のライバルであったミハエル・シューマッハーの息子、ミック・シューマッハーとピアストリと対比して語った。

 ミック・シューマッハーは2021年にハースからF1デビューを果たした。しかし、当時のハースは非常に苦しい状況に陥っている状況であり、相次いでクラッシュしてしまったこともあって、2022年限りで同チームのシートを喪失。今季はメルセデスのリザーブドライバーに就いている。

 ヒルは次のように続けた。

「ミックは、注意を集めるようなパフォーマンスを実際に見せることはなかった。そして、人々がドライバーに対して抱く必要のある信頼を得るのに、苦労することになった」

「それはいつの間にか雪だるまのようにどんどん大きくなってしまい、押しつぶされてしまうような格好になってしまった」

「しかしこれまでのところ、オスカーは考えるべき問題を抱えてはいない。そういう声を押し除けるための、非常にしっかりりた足場を持っていると思う」

 ヒルは、ピアストリが力強いパフォーマンスを発揮する時期が近づいていると語った。そしてチームメイトのノリスのパフォーマンスが上がるに連れて、ピアストリも成長を見せるだろうと考えている。

「オスカーはやる気十分だし、自信に満ち溢れている。そして、F1に慣れ親しんでいるように見えるよ」

 そうヒルは言う。

「彼はすでに印象的なパフォーマンスを見せている。それはシーズンの残りに向けて良い前兆だろう」

「ランドの調子が上がってくると、彼にとっては難題となるだろう。でも、オスカーはそこから多くのことを学ぶはずだ」

「彼の母国レースであるメルボルンでは、彼は多くの注目を集めるはずだ。それが彼の集中力を削ぐことになるかどうかだ」

「しかし彼は、集中力を失ったり、F1の周囲のことに興味を持つような人物ではないと思う」

「彼は非常に熱心で、集中力のあるドライバーのようだ」