F1の2023年シーズンはレッドブルが1強体制を築いているため、タイトル争いもチームメイト同士のモノになるだろうと見られている。レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はそのマネジメントで重要なことは、“パラノイア”を避けることだと語る。

 タイトル争いは第4戦までを終えた段階では、レッドブルの前年王者マックス・フェルスタッペンとそのチームメイトであるセルジオ・ペレスがワンツー体制を築き、ペレスが6ポイント差で首位フェルスタッペンに接近している。

 今年のレッドブルのマシンRB19はライバルを圧倒するパフォーマンスを示しているため、ドライバーズタイトルを巡る争いは、彼らふたりの間で争われていくだろうというのが、現在の見方だ。

 タイトルを巡るチーム内バトルは、過去の事例から言ってチームメイト同士の緊張が高まり難しい対処を迫られることが多い。

 なおレッドブル側は現時点ではふたりを自由に争わせる方針を示している。ホーナー代表は前述のような危険性を承知しつつも、フェルスタッペンとペレスの両者をあらゆる面で平等に扱うためにできる限りのことをしている限り、問題は無いだろうと考えている。

「贅沢な悩みだと思うよ」

 ふたりのドライバーによるタイトル争いにおける問題について聞かれた際、ホーナー代表はそう答えた。

「まず第一に、どのチームの代表もこの問題を抱えたいと思っているだろう。我々も経験してきたことだ」

「最も重要なのは、パラノイア(※偏執症とも。根拠なく他者が自分を害そうとしている、自分を欺こうとしているといったことを訴えたりするような状態を指す)が忍び寄らないことを確実にし、両方のドライバーを平等に扱うことだ」

「毎週末、どちらのドライバーが先に出ていくかという点で、公平を期すのにも苦労する。彼らはデブリーフィングでどちらが最初に話すかですら互い違いだ」

「しかしこれはレースであり、F1なんだ。セーフティーカーやピットストップといったように、何かが起こる可能性があるし、スポーツの全ての側面をコントロールすることはできず、変動する要素があるんだ」

「ドライバーが両方とも平等にチャンスを得ていると理解していれば、最終的にはサーキットで彼らがどうするかにかかっていると思う。信頼性ではなく、ふたりのドライバーの間でチャンピオンシップ争いの重要な役割を果たしたいところだ」

■ロズベルグVSハミルトン! メルセデス代表のアドバイス

 近年のチームメイト同士でのタイトル争いといえば、ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンによるメルセデス内のバトルだろう。

 メルセデス代表のトト・ウルフはその経験から、ホーナー代表にとっても難しい仕事だろうと語っている。

「過去の経験からすると、これはクリスチャンにとってもチームにとっても非常に大変な仕事だろう。ふたりのドライバーは常に自分たちが公平かつ平等に扱われようとすると同時に、アドバンテージを得ようとしているからだ」

「我々のチームの例では、しっかりした透明性と明確さを維持すること、そして実際に日曜日のレースに向けて話し合いを行ない、ボーダーラインを設けることが重要だった」

「最終的にニコとルイスはチームの意見を尊重し、我々は戦いがあることは認め、彼らは互いにバトルを繰り広げた。過去に遡ってみると、特に2016年は違ったやり方をしていたかもしれない」

「ただ、ふたりがチャンピオンシップ争いのためにレースをしていること、それを同じガレージでやっていること、同時にそれがより大きな構造の一部であることのバランスを上手く獲るというのは、難しいことだ。なにより彼らは競い合う獣なんだからね」