ポルシェWEC、ル・マン24時間へ向けBoPが調整されると明言。ただし、トヨタ側は「そんな余地はない」と実施に疑問符
今年のハイパーカークラスには新たに、IMSAとの共通規格であるLMDh規定に基づくマシンが登場し、ポルシェとキャデラックが新規参戦。またWECのル・マン・ハイパーカー(LMH)規定でも、フェラーリやヴァンウォールが新たに参戦を開始し、ハイパーカークラスは賑わいを見せている。
WECでは今年、独自開発がメインのLMHと、共通パーツを多用するLMDhの勢力均衡を保つべくBoPが設定されている。
昨シーズンまでは、ドライコンディションでの周回数が十分であれば、2戦ごとにLMHのBoPを調整することが可能だったが、今シーズンはプロローグテストを前に開幕4戦のBoPが公開。3月の開幕戦セブリング1000マイル、4月の第2戦ポルティマオ6時間とスパ6時間ではBoPに調整は行なわれなかった。
次戦は今年で100周年となるル・マン24時間となるが、ポルシェ・モータースポーツのトーマス・ローデンバッハ代表は、伝統の一戦を前に調整が行なわれるとスパ6時間の際に語っていた。
スパ6時間の結果を受けて変更が行なわれる可能性があるか、と訊かれたローデンバッハは次のように答えている。
「そうなることは分かっている」
「ル・マンの前に調整されることは明らかだ」
「私はポルティマオの後と予想していたが、ル・マンの前に調整すると聞いている」
そしてローデンバッハは次のように続ける。
「問題は変更が行なわれるかどうかではなくて、何が変更されるかということだ」
実際、WECを主催するFIAとACOは、スパ6時間の前にLMHとLMDh間の勢力均衡を図る”プラットフォームBoP”に調整を加える機会を得ていた。
しかしそれが唯一の機会だったのか、開幕3連勝中のトヨタ『GR010ハイブリッド』を含むLMHと、ポルシェ『963』を含むLMDhのパフォーマンス差を調整する余地がル・マンの前にあるのかどうかは不明だ。
Toyota Gazoo Racing Europeでテクニカルディレクターを務めるパスカル・バセロンは、ル・マン前にBoP調整をおこなえるのはスパ6時間だけだったと主張している。
「(ル・マンを前に)調整している余地はない」とバセロンは言う。
「レギュレーションがどうなっているのか、正確なスケジュールで合意している文書が存在する」
バセロンが言う文書は非公開となっており、FIAとACOはル・マンを前にプラットフォームBoPだけを変更できるということを明かしたに過ぎない。
FIAの担当者はmotorsport.comに対して、3月の開幕戦に発表されたいわゆる”説明書”を示し、BoP調整が未だ可能だと解釈することもできると語っていた。
説明にはこうある。
「BoPは、シーズンを通してル・マンの後1回のみ調整が可能で、LMHとLMDhのプラットフォームが調整される可能性がある」
今シーズンからBoP調整システムには、レースでのラップタイムデータではなくシミュレーションが使用されている。
その目的は、BoPで有利なアドバンテージを得ようとチームが故意に”手を抜く”可能性を排除するためで、開幕4戦でBoPがほぼ固定されているのもそのためだ。
そしてル・マン以降、マニュファクチャラーBoPと呼ばれる大規模な変更が個々のマシンに加えられ、シーズン後半の3戦を迎えることとなる。
なお11月の最終戦バーレーン8時間を前に、2回目のBoP調整が行なわれる可能性もある。