フェラーリのカルロス・サインツJr.は、今季のフェラーリ『SF-23』はタイヤを温存する上で柔軟性がゼロであり、つまりそれはプッシュできないことを意味していると語った。

 サインツJr.はF1第5戦マイアミGPを3番グリッドからスタートしたが、結果は5位フィニッシュ。ピットレーンでのスピード違反による5秒のタイム加算ペナルティは結果に大きな影響を及ぼさなかったが、レッドブルに勝負をしかけるどころか、アストンマーチンのフェルナンド・アロンソ、メルセデスのジョージ・ラッセルに力負けとなった。

 チームメイトのシャルル・ルクレールも決勝ではピリッとせず、結果的にスタート位置と同じ7位でのフィニッシュとなった。

 フェラーリはマイアミGPからアップデートパーツの投入を開始。マイアミでは新フロアも導入された。両ドライバーはハンドリングがより穏やかになったとポジティブなコメントをしていたものの、予選ではルクレールがクラッシュ。決勝では両者ともハードタイヤでのペース不足を嘆いた。

 サインツJr.は、マシンの「柔軟性がゼロ」だと表現。プッシュするとタイヤを痛めてしまうため、思うような戦略を選ぶことができないと語った。

 フロア改良のによるメリットについて聞かれたサインツJr.は、『Autosport』誌に次のように答えた。

「今のところ、プッシュできないんだ」

「特にレースでは、1周プッシュして速いラップタイムを刻むと、次のラップでは0.3秒遅くなってしまう。タイヤにとてつもなく厳しいんだ」

「つまり、プッシュしたりしなかったりする柔軟性がなく、最後まで一定のペースで走らなければならないんだ」

「もっと良くなると思っていたので驚いているが、(マイアミで)まだやるべきことがあることを学んだ」

 マイアミGPを振り返り、サインツJr.は次のように付け加えた。

「タフだった。厳しかったよ。ミディアムタイヤではとても好調だったから、ハードタイヤで大苦戦したことに少し驚いた」

「フェルナンドにアンダーカットを試したんだ。そのために3、4周タイヤをプッシュした。でも何故か、今の僕たちのクルマにはプッシュできるかどうかの柔軟性が全く無いんだ」

「最後まで走りきるためには、残りのレースで限界よりも下で走らなければいけなかった。風向きやタイヤへの負担を考えると、あのハードタイヤでのスティントは長すぎたんだ」

「僕たちはアンダーカットを狙って、それは機能した。ただ今にして思えば、今のクルマはアンダーカットやオーバーカットを試すための柔軟性がほとんどない。それが僕らにとっての足かせになっている」

「受け入れるのは大変なことだ。タイヤマネジメントとレースペースについて、やるべきことがたくさんあることを示している」

 ディフューザーへ向けた空気の流れを改善するフロア形状の変更は、夏休み前にフェラーリが投入する一連のアップグレードの第1弾。次戦エミリア・ロマーニャGP、第8戦スペインGPへと続いていくことになる。

 これらのアップデートでサインツJr.が指摘する問題を解決できなければ、フェラーリの今季には暗雲が垂れ込めることになるだろう。