WECのタイヤウォーマー禁止に批判噴出も、FIAは変更を検討せず「サステナビリティの観点から必要」
WEC第3戦スパ6時間レースでは、寒いコンディションとなったこともあってタイヤウォーマー禁止の影響が大きく出てしまった。
ピットアウト直後は全くタイヤがグリップせず、予選ではトヨタのブレンドン・ハートレーが、決勝レースではフェラーリのアントニオ・フオコがそれぞれアウトラップで突然マシンのコントロールを失い、クラッシュを喫している。
トヨタのドライバー兼チーム代表の小林可夢偉は「めちゃくちゃ危険」と表現し、フェラーリのスポーツカー部門の責任者であるアントネッロ・コレッタは、6月の次戦ル・マン24時間までに禁止事項を再検討するよう求めた。
コレッタは「この問題は安全性に大きな影響を与えるので、真剣に考えるべき時だ」と語った。
さらにプジョーのドライバーであるジャン-エリック・ベルニュは、ドライバーの懸念がFIAによって聞き入れられなかったことを示唆した。
ル・マンに間に合うように変更することができるかという質問に対して、ベルニュは「ドライバーの声が意思決定の場で聞き入れられているとは思わない」と答えた。
実際、FIAはタイヤウォーマー廃止の決定を覆すことを検討してはいないようだ。FIAのサーキットスポーツ担当ディレクターであるマレク・ナワレツキは、次のように述べ、タイヤウォーマー禁止はWECに必要な措置だと述べた。
「タイヤの加熱廃止は、サステナビリティの観点から非常に必要なステップであり、FIA耐久委員会が長期的なWECタイヤロードマップの一部として合意したものである」
「すでに何年も前から、耐久レースシリーズを含め、タイヤウォーマーに頼らないモータースポーツシリーズが世界中に存在していることを忘れてはいけない」
「インシデントの性質はそれぞれ異なるので、結論を出す前にそれぞれのケースを見る必要がある」
またスパでは、コールドタイヤでピットを出た速度が遅いマシンとの速度差の影響を緩和するための対策も施されていた。
FP1から、ターン1〜4のラ・ソースからオールージュを登り切るところまで、コース上の低速走行車両を示す白旗を提示。FP3からはコースサイドのマーシャリングパネルにも白旗が表示され、ピットアウトした車両があることをドライバーに知らせることができるようになった。
ハイパーカーのタイヤサプライヤーであるミシュランも、通常のWECではスリックタイヤを2スペックしか持ち込まないところを、コンディションの変化が予想されるスパで各チームがより適切なタイヤを使用できるようにするため、3スペックのタイヤを持ち込んでいた。
ナワレツキの言うように、タイヤウォーマーを使っているカテゴリーの方が少数派であり、F1もタイヤウォーマーの廃止を目指している。しかし、一筋縄ではいかないようだ。