WEC(世界耐久選手権)では、今シーズンからタイヤウォーマーの使用が禁止されることになった。しかし安全性を考慮し、6月に開催予定のル・マン24時間レースに限り、使用が解禁されることになった。

 タイヤを作動温度領域まで人為的に温めるタイヤウォーマーは、サステナビリティを理由に、WECでは今シーズンから使用が禁止されることになった。

 しかし先日行なわれたスパ6時間レースでは、冷えたタイヤでコースインしたマシンがクラッシュする事故が相次いだ。予選では、トヨタのブレンドン・ハートレーがアウトラップでラディオンを上り切ったところでクラッシュ。決勝でも、フェラーリのアントニオ・フオッコが、ピットレーンから出た直後にマシンのコントロールを失い、ウォールに激突した。

 この件を受け、タイヤウォーマー禁止には各方面から不満が噴出。トヨタのドライバーであり、チーム代表も兼務する小林可夢偉も「めちゃくちゃ危険」と発言していた。

 ただFIAは、タイヤウォーマー禁止に関して「持続可能性の観点から切実に必要な措置」だと声明を出し、ルールを変更するつもりがないとしていた。しかしながら一転、ル・マン24時間レースに限っては、タイヤウォーマーの使用が許可されることになった。

 FIAとともにWECのレギュレーションを策定するACO(フランス西部自動車クラブ)が5月11日(木)に発表した声明によれば「WECのタイヤサプライヤーであるミシュランとグッドイヤーと、タイヤ使用データを徹底的に評価」した結果として、この決断を下したという。

 声明では、さらに次のように説明されている。

「(タイヤウォーマー使用禁止の)免除は、ル・マンのみに限定されている。そしてあらゆる経験レベルのドライバーが、路面状況や気温に関係なく、できる限り安全な環境で競技できるようにする」

「タイヤメーカー、チーム、ドライバーは、2023年シーズンのWECの残りのレースに向けて、冷えたタイヤを必要な温度まで温める方法について、理解を深めるための貴重な時間を手にすることができる」

 このタイヤウォーマー禁止のル・マンに限った撤廃は、ミシュランタイヤを使うハイパーカークラスとLM-GTE Amクラス、そしてグッドイヤーを使うLMP2クラスの全てに適用されることになる。