F1にタイヤを供給しているピレリは、2023年マシンのダウンフォースが飛躍的に向上したことを受け、7月のイギリスGPに向けてより強靭な構造を持った新タイヤを用意しているようだ。

 この措置は安全上に懸念があったからというわけではなく、将来的に問題が起きないようにするためだという。新タイヤのコンパウンドは、現在使用されているタイヤと同じものが使われる。

 ピレリは数週間前から、各チームがどれだけマシンを改良したかに注目しており、情報筋によると現在生み出されているダウンフォースは、すでに今季終盤に到達すると予想されていたレベルに追いついてしまっているという。

 さらに先日のマイアミGPでは、各ドライバーが新舗装された路面のグリップ不足を訴えたにも関わらず、ラップタイムが劇的に向上。チームは今後数レースにわたってさらなるアップグレードを準備しており、マシンはより速くなる一方だと予想される。

 FIAとの協議の結果、ピレリはシルバーストンやスパ、ザントフールトといった夏にレースが開催されタイヤへの負荷も大きいサーキットを前に、トラブルのリスクを回避するための措置を講じることが論理的であると判断した。
 
 今週初め、ピレリはFIAに対し、7月7〜9日開催のイギリスGPから新しい構造のタイヤを導入することを許可するよう提案した。

 F1技術規則では、シーズン中のタイヤ構造の変更は、チームによる承認か、安全上の理由から強制的に行なわれる正式なプロセスを経なければならない。

 技術規則の10.8.3条には、シーズン中のタイヤ仕様について次のように定められている。

「F1委員会の同意がない限り、変更することはできない。上記にかかわらず、FIAは安全上の理由から、選手権シーズン中に予告なく仕様を変更することを決定することができる」

 ピレリは5月12日に、そのような承認が得られたことを明らかにし、6月のスペインGPで各チームが新構造をテストすることを計画している。

 ピレリのF1責任者であるマリオ・イゾラは、この変更について次のように語った。

「今シーズンの序盤戦を通じて、2023年型のマシンが昨年よりもはるかに高いパフォーマンスを発揮していることを確認した。それは、10チームすべてが並外れた開発ペースを示しているためだ」

「例えばマイアミでは、ポールタイムが昨年より2秒近く速くなったが、同じような進歩がレース中にも見られた」

「ピレリのシミュレーション作業では、関係者が指定する性能目標を達成する製品を供給するだけでなく、潜在的な問題を予測し、それに迅速に対応することを常に目指している」

「新仕様のタイヤには、2024年に向けてすでに開発している素材が含まれており、他の技術パラメータやトラック上での挙動に影響を与えることなく、タイヤの耐性を高めることができる」

「すべてのチームが公平に新構造のタイヤをテストできるように、ピレリはスペインGPのFP1およびFP2で使用するタイヤを1台につき2セット追加供給する」