スクーデリア・アルファタウリは、次戦エミリア・ロマーニャGPで新設計のフロアを投入する予定だ。今季開幕からパフォーマンス面で苦しんできたチームとしては、この新フロアがパフォーマンスを大きく引き上げる一因になることを期待している。

 今シーズンのアルファタウリは、開幕から大いに苦戦。角田裕毅が奮闘し、ここまで全戦で入賞争いを演じてきたものの、実際の獲得ポイントは僅かに2。コンストラクターズランキングでは9番手に沈んでいる。

 チーム代表のフランツ・トストはこのパフォーマンスを受け、「エンジニアを信用していない」と批判的な発言を展開。空力責任者のディッコン・バルムフォームが辞任する形となった。

 アルファタウリはこの状況から脱却すべく、マシンのパフォーマンスを高めるために、開発プログラムを推し進めている。先日のマイアミGPには、改良されたフロントウイングやミラーを投入。そして次のエミリア・ロマーニャGPでは新しいフロアが投入される。

「イモラには、まったく新しいフロアを投入する」

 ビークル・パフォーマンス責任者のギョーム・デゾトゥーはそう語った。

「マシンに取り付けるのを楽しみにしている。これは非常に重要で、大きな一歩だ。期待に応えられることを願っている」

「(風洞実験と実走行データの)相関関係のクオリティには、常に疑問符がつく。しかしこれまでのところ、我々が投入したアップデートは期待に沿って機能している」

「(マイアミ用の新しい)フロントウイングは上手く機能し、風洞実験での予測と一致した。フロアの投入を楽しみにしている」

 デゾトゥーは、フロントウイングのアップデートは、アウトウオッシュ(マシンの側方に気流を導く考え方)を増やす取り組みの一環であると認めた。

 2022年から導入された現在のテクニカルレギュレーションでは、アウトウオッシュを実現しにくくなっていた。これはアウトウオッシュが、マシン同士が接近するのを阻害する重要な要素だとされ、これが発生しにくいようにレギュレーションが設定されたからだった。しかし各チームの開発が急速に進んだことで、このアウトウオッシュが増える傾向にあり、接近戦がしにくくなり始めている。

「より多くのアウトウオッシュを生み出すために、フラップと翼端板周辺の形状を変更した」

 そうデゾトゥーは語った。

「現在のレギュレーションは、アウトウオッシュと後方乱気流を抑えるのが目的だった。しかしそれにより、マシンのパフォーマンスが犠牲になっている」

「全てのチームがアウトウオッシュを取り戻すため、小さな解決策を数多く見つけようとしている。これはマシン周辺を流れる気流の形、そしてフロア下で生成されるダウンフォースにとって有益なのだ」

 またデゾトゥーによれば、マイアミGPで投入されたミラーも、後方気流の”構造”を修正し、様々な状況でマシンの空力特性を改善することを目的としたモノだったという。

 しかし今季、中団チームのパフォーマンスは実に僅差。そのため、ほんの僅かなパフォーマンス向上でも、コース上で有益な結果を手にできる可能性があるという。

「中団グループの争いは実に僅差だ」

 そうデゾトゥーは言う。

「ラップタイムの1%以内に、10台以上のマシンがいる。だからチャンスはあるんだ。十分に良いステップであれば、グリッド上でいくつかポジションを引き上げることができるだろう。でも、全チームが成長している」

「だから、中団グループの戦いは、1年を通じて実に興味深いモノになるだろう」

 空力責任者の離脱により、チーム内部の開発における優先順位が見直されたとデゾトゥーは説明する。

「クルマの開発の方向性は変わった」

「我々は、マシンにおける開発したい場所の優先順位を、少し変更している」

「確かに、マシンが何か新しいモノに変わるまでには時間がかかる。しかし、これは少し前に起きたことなんだ」

 トスト代表は最近では、現在のエンジニアリングチームを信頼していると語る。これについてデゾトゥーは、非常に励みになっているという。

「彼がそう言ってくれたことを、とても嬉しく思っている。フランツは、エンジニアリング・グループを大いに支援してくれている」

「彼は間違いなくレーサーだ。我々全員がそうであるように、彼は良い結果を手にしたいと思っている。しかし、シーズン序盤は確かに苛立っていた」

「でも、戦いは最高潮に達している。そして我々に、戦い続けられる十分な能力があるかどうか……それを示せるかどうかは我々次第だ」