今シーズンのF1もここまで5戦が終了。その全てをレッドブルが勝利し、圧倒的な強さを見せている。しかしマシンのパフォーマンスという意味では、昨年以上に後方と接近しているかもしれない。

 各グランプリの予選でのマシンパフォーマンスを計算していくと、トップと後続の差が大きく詰まっているように見える。つまり、ほんの少しでもパフォーマンスが向上すれば、その勢力図が入れ替わる可能性があることを意味していて、シーズン後半には思わぬ大逆転が起きるかもしれない。

先頭集団に後方が追いついてきている?

 本稿で使うマシンパフォーマンスは、各チーム2台のマシンのうち、各セクターごとに速い方を抽出。最速のマシンを100%とし、そこからの遅れを導き出している。

 この計算に基づくと、今季ここまで全てレッドブルが最速。基本的には2番手にはフェラーリ、3番手にはアストンマーチンが続くという形になっている(第3戦オーストラリアGPのみ、メルセデスが2番手だった)。

 一方昨年は、フェラーリとレッドブルが最速を争う状況。特に前半戦では、フェラーリが圧倒的な速さを見せていた。優勝という結果にはなかなか繋がらなかったが。

 今シーズンと昨シーズンのパフォーマンス推移を示したグラフ比べると、後続のマシンのパフォーマンスが、先頭に近づいているのがよく分かる。

 今シーズン前半5戦では、レッドブルから0.5%以内のところに、フェラーリだけでなくメルセデスやアストンマーチンが入ってきている。パフォーマンス差0.5%は、1周1分30秒のコースで言えば0.45秒の差である。

 しかし昨年は、前半戦だけみればメルセデスが開幕戦こそ0.5%差以内に入ったものの、第10戦まででレッドブル、フェラーリ以外のチームが0.5%差以内だったのはこの開幕戦のみ。シーズン全体(22戦)を見渡しても、メルセデスが合計6戦、マクラーレンが1戦だけ0.5%以内に近づいただけだった。

 つまりそれだけ、今季は接戦になっているのである。

昨年同時期のメルセデスよりアストンマーチンはトップに近い……

 昨年はメルセデスが、シーズンが進むにつれてパフォーマンスを上げ、サンパウロGPで唯一の勝利を手にした。今季のアストンマーチンは、少なくとも昨年同時期のメルセデスよりトップに近いはずであり、シーズン後半には優勝争いに加わってもなんら不思議ではない。むしろ、昨年のメルセデスよりも十分にその可能性があるだろうと言える。

 しかも今季のアストンマーチンは、レッドブル同様特にレースペースが優れている。これはレースよりも予選で好ペースを発揮するフェラーリとは対照的。故に勝利を狙える可能性が高まる要素だと言えるだろう。

 逆に昨年のフェラーリは、シーズン序盤もレースペースには難があったが、予選パフォーマンスが秀でていたため、なんとか勝利を手にすることができたが、予選のパフォーマンス差が縮まりレッドブルに太刀打ちできない状況になったと言えよう。

 また今季のレッドブルは、昨シーズンのコンストラクターズチャンピオンに輝いたことで、ランキング7位だったチームの70%しか空力開発を行なうことができない。しかもレッドブルは、2021年の予算制限に違反した罪で、空力開発がさらに10%削減されることになった。つまりランキング7位のチームに対して63%しか空力開発が許されない。

 昨年のランキング7位だったのは、何を隠そうアストンマーチンである。アストンマーチンはこの”37%”のアドバンテージを活かし、0.5%の差を埋めることができるかということが、今シーズンこれからの最大の見どころとなろう。