世界ラリー選手権(WRC)は、ドライバーたちとカテゴリーを改善するアイデアを考え出すべく、動き始めているようだ。

 ラリー・ポルトガルを前に、ティエリー・ヌービル(ヒョンデ)はWRCに対する危機感を露わにし、次のように語った。

「僕の個人的な感覚では、WRCが正念場にあると思っている」

「COVID-19以前はそれなりに良かったけど、それ以降、WRCは下り坂になった。そして、それがどれほど急激なモノなのかを、誰も気がついていないように感じる」

「もう誰もWRCのことを気にしていない。メーカーの関わり方も以前とは異なってきていると思う。だから色々なことが『ああ、対処しなきゃ』と思わせるんだ」

 ヌービルは、改善のためにミーティングを開くべきだとコメントしていたが、早速WRC側が動きを見せた。WRCシニア・スポーティング・ディレクターであるピーター・トゥールは、ヌービルのコメントを注意深く読み、ドライバーからもっと話を聞きたいとして、次戦サルディニアでミーティングを開くことを目指しているようだ。

「まず第一に、私は彼(ヌービル)の姿勢にとても感謝している。彼は目もくらむような速さを持っているだけでなく、プッシュし、正しい質問をする人だからだ」

 トゥールはそうmotorsport.comに語った。

「我々は喜んで話を聞きたい。私は(ヌービルのコメントを聞いて)最初に(FIAラリーディレクターの)アンドリュー・ウィートリーに話して、貢献したいと思うドライバーと積極的にコンタクトを取るべきだとお願いしたんだ」

「つまり、サルディニアでのミーティングをセッティングしようと思っている。どんな意見もウェルカムだ。基本的にお互いのことを話すより、話し合うほうが良いと考えているからだ」

「これは私の考えであり、彼の考えを信じる。彼の人柄やスポーツのやり方がとても好きなんだ」

 WRCは現在、2025年以降のレギュレーションを策定する作業を進めている。2025年から2026年にかけては、現行のラリー1レギュレーションに手を加えたものが基本となることが広く予想されている。しかし、これは2024年末で切れる現在のハイブリッド・サプライヤー、コンパクト・ダイナミクスとの契約を更新するか、新しいサプライヤーを調達するかにかかっている。

 2027年以降はより大きなレギュレーション変更が予想されるが、電気自動車や水素エネルギーの活用などはメーカーとの話し合いが続けられている。ラリー・ポルトガルでも、プロモーター、FIA、チームによるミーティングが開催され、カテゴリーの将来について議論された。

「新たなメーカーはいつ来るのか、誰もが我々に尋ねている」とトゥールは付け加えた。

「今回もFIAと非常に緊密に連携している。昨年から、各メーカーに会いに行くことが許されるようになったんだ。ヨーロッパでも、ラリー・ジャパンの際にはアジアでもだ」

「今のところ、大半のメーカーが純粋な電気自動車に集中しているというのが現状だ。誤解のないように言っておくが、私は電気自動車に反対しているわけではない」

「我々はフルエレクトリックで世界ラリークロス選手権を運営しており、もしこれが道となるのであれば、我々はその道を進むだろう。しかし現在の技術では、我々が知っていて、愛しているラリーを劇的に変えてしまうことになる」

「新しいメーカーが参入する場合、明確なレギュレーションがあることが非常に重要なのだ。レギュレーションはFIAが決定するものだが、我々は現在のメーカーを維持することにも重点を置いているため、話し合いの機会を持ち、意見を述べるチャンスがある。我々は正しい方法を見つけなければならない」

「この協議は始まったばかりではない。ここ(ポルトガル)で非常に良いミーティングを行ったが、機密事項なので何も話すことはない」

「しかし我々は絶対に良い方向に進んでいるし、今のクルマで一定の期間戦い、その後乗り換えることができると、私は楽観視している」