週末に開催が予定されていたF1エミリア・ロマーニャGP。イモラ・サーキットのあるエミリア・ロマーニャ州全域が豪雨と洪水の被害を受けたことにより、開催見送りを余儀なくされた。被災地域への影響も踏まえると、妥当な判断だろう。

 しかしF1は公式声明の中で、エミリア・ロマーニャGPについて『続行しない(not to proceed)』と表現している。この特殊な言い回しは、エミリア・ロマーニャGPを完全に中止したわけではなく、日程を変更して今季中に開催する可能性を残したものだと捉えることもできる。

 しかし2023年のカレンダーを見ると、エミリア・ロマーニャGPが他の時期に開催される可能性は極めて低いと言わざるを得ないだろう。

 サーキットが受けた被害の大きさを踏まえると、すぐに日程を再設定するのは難しいだろう。万が一6月中に開催が可能な状況が整ったとしても、空いている週末は2ヵ所しかなく、その間である6月16〜18日に開催されるのはカナダGPであることから、ロジスティクス的にも無理が生じる。

 7月の開催はそれ以上に不可能だ。元々オーストリア-イギリス、ハンガリー-ベルギーと1ヵ月で4レースを実施するというスケジュールになっており、唯一空いている週末(7月13〜16日)にエミリア・ロマーニャGPを入れると、5連戦となってしまうのだ。

 その後、F1は夏休みに突入。多くのスタッフはすでに貴重なオフの予定を立てており、シーズン後半戦の開始を1週間前倒しすることはできないだろう。

 8月最終週のオランダGPを経て、F1は再びイタリアを訪れる予定であり、9月にモンツァでのイタリアGP、イモラでのエミリア・ロマーニャGPを実施することができれば理想的だっただろう。

 しかしイタリアGP後の9月8〜10日にエミリア・ロマーニャGPを設定した場合も、オランダGPから日本GPまで再び5連戦となってしまう。シンガポールGPと日本GPがフライアウェイ戦となるため、なおさら実現はありえない。

 日本GP後(9月29日〜10月1日)にエミリア・ロマーニャGPを設定した場合も、シンガポールGPからカタールGPまでの4連戦となってしまうし、10月下旬から11月上旬にかけてはオースティン、メキシコ、ブラジルの3連戦が予定されている。この前後にイモラでのレースを入れ込むのも非現実的だ。

 つまり、11月中旬までにエミリア・ロマーニャGPを開催するのはほぼ不可能であり、この頃までにはすでにエミリア・ロマーニャ州は寒くなってしまっているだろう。11月最終週のアブダビGP後の開催は、契約的にもコンディション的にも実現は難しい。

 結果的に、ファンが歴史あるイモラでF1を見るのは2024年まで待たなければならないことになるのはほぼ確実だろう。不可抗力での中止によるチケットの払い戻し以上の動きはないと思われる。

 イモラは昨年、エミリア・ロマーニャGPの開催契約を締結しており、その期限は2025年まで。ただ、今回の中止の結果これが2026年まで延長される可能性がある。