アストンマーチンF1、王者レッドブルへの挑戦は「まだ少し先」と冷静。求められるのはマシン全体の底上げ?
2023年に入り好結果を続けているアストンマーチンは、第5戦マイアミGPを終えた段階でコンストラクターズランキング2番手。予選では直近のライバルであるフェラーリやメルセデスに先行されることもあるが、今季加入のフェルナンド・アロンソが決勝レースで力強い走りを披露し、5戦中4戦で3位表彰台を獲得している。
ただ、ダブルタイトル獲得に向けて突き進むレッドブル勢は快調そのもの。レースではレッドブルの2台が”別リーグ”状態と言えるほどの強さを見せており、ランキングではアストンマーチンに対しても既に122ポイント差をつけている状況だ。
ファロウズは、アストンマーチンがレッドブルを参考にするのは当然であり、『AMR23』があらゆる面で改善可能であるということを認めている。
「レッドブルと比較して、自分たちがどのような位置にいるのかを考える必要がある」とファロウズは言う。
「ただ、我々が比較的強いと考えているエリアはあると思う」
「また、サーキットごとにマシンを最適化する必要があるので、低速コーナーや高速コーナーなど、ライバル勢と比較すると強くはない部分が出てくることもあると思う」
「レッドブルのコンセプトは、我々のモノも少し進歩させたところにある。我々は昨年の序盤で全く異なるコンセプトへ移行しており、まだ(このコンセプトは)開発中だ」
「今年、我々は非常に大きな一歩を踏み出したと思うが、まだ少し先はある。正直なところ、どこがどうこうという話じゃない。実際、全ての面で改善していく必要があると思う」
またファロウズは、AMR23が特に癖のないオールラウンダーであるとも指摘する。
「我々のマシンは、ある特定のエリアで特別強いという訳ではないんだ」と彼は言う。
「我々は、様々なエリアで合理的な能力を発揮可能なマシンを作り上げることができたと思う。だから、それぞれのサーキットに最適と思われる調整をすることができるんだ」
「空力的、機械的な観点から、我々が重点的に取り組んでいるエリアがあるのは確かだ。ただ、正直に言って、今のところ大きな弱点があるマシンだとは思っていない」
「今持っているスピードをベースに、同じフィロソフィーで続けていきたい」
■最高速に集中しすぎてはいけない
今年のレッドブル『RB19』は空力効率の良さとDRS性能によって、特に直線区間で威力を発揮していると言われる。
他チームも空気抵抗の少ないパッケージへと開発の舵を切る中で、ファロウズは直線スピードのみに焦点を当てすぎてはいけないと考えている。
「我々は、どのサーキットにおいてもラップタイムを最適化しようと考えている」と彼は言う。
「他チームが何をしているのか、少しは意識する必要がある。トップスピードで何km/hも離されるなんてことは嫌だからね」
「でも正直なところ、最終的な最速ラップタイムと、なぜそれがレースで最速となるのか、ということに我々は集中していたい。他チームがやっていることよりも、それが我々の焦点になっているのだ」
今季中にアストンマーチンは実力で勝てるのか、と訊かれたファロウズは次のように答えている。
「今シーズン中にも優勝できると言いたい」
「カレンダーの中には、必ずしも通常の走りとはいかないサーキットもあるし、マシンが持つ特定のキャラクターが力を発揮するところもある。例えばモナコとか、そういったところだ」
「しかし正直なところ、我々は自分たちの状況に関して現実的でいる。可能な限り短い時間で自分たちのマシンのパフォーマンスを最大化することに集中している。そして、それがどういった結果をもたらすかを見ていくことになる」
アストンマーチンは将来的にレッドブルと肩を並べ、F1タイトルへ挑戦することを目指している。しかしファロウズは、早くから2024年用マシンの開発に移行し、2023年シーズンを犠牲したくはないと考えている。
「来季のマシン開発をできるだけ早くスタートさせたいと考えているのは確かだ。しかし、今年のマシンをできるだけ犠牲にしないことが、我々にとって本当の正念場なんだ。必然的に、今年のマシンを進化させる形になるだろうからね」
「だから、今年のマシンに関するデータやアップデートを続けることで、確実に情報は得られる。でももちろん、できるだけ早く(2024年マシン開発への移行を)始めるつもりだ」
ファロウズは2023年から2024年に向けて大きなレギュレーション変更がないことから、AMR23で得られた知見が2024年マシンに活きると認めている。
「繰り返しになるが、このマシンを開発していく上で、これ以上アグレッシブにならないようにしたい」