スーパーGTをはじめ、国内外の様々なモータースポーツカテゴリーにタイヤを供給しているブリヂストン。最近ではハンコックの工場火災を受けて、当初の予定から1年前倒しでスーパー耐久へのタイヤ供給を開始しており、慌しい中でタイヤの製造・開発を行なっている。

 彼らはスーパーGTにおいても、GT500クラスの供給台数は昨年から1台増え、全15台中10台となった。GT300クラスの供給台数が1台減ったとはいえ、彼らにとってもキャパシティの限界ギリギリだという。

 そんな中で、日産陣営の3号車Niterra MOTUL Zと23号車MOTUL AUTECH Zにタイヤを供給するミシュランが、今季限りでGT500の活動を休止すると発表。彼らが来季からどのメーカーのタイヤを使うのかに注目が集まるが、2016年からクラス7連覇中のブリヂストンに白羽の矢が立っても何ら不思議ではない。

 実際問題、GT500で11台以上にタイヤ供給することはブリヂストンとして可能なのか? そう尋ねると、モータースポーツ開発部門の首席主幹である寺田浩司氏は「工場の強化ができれば可能」だと答えた。つまり、スタッフのオーバーワークに頼るのではなく、人的・機械的なリソース強化が前提になってくるということだ。

「ちゃんと人を雇用することと、あとは成型機や加硫機などタイヤを作る設備(も必要)ですね」

「設備は置くと固定資産税がかかりますし、F1をやっていた時よりも規模は縮小しているんですよね。そういったところを強化し、建屋を増やせば、というところです」

「モータースポーツを強化していこう、というのはうちの会社の大きな方針でもあります。S耐は(使うタイヤの)本数が多いのでかなりのインパクトですが、例えばこれを量産工場など他の工場で作れるようになれば(小平の開発工場に)余力ができるので、他のカテゴリーもできる……そういったことが考えられます」

 モータースポーツ活動を強化することが大きな方針のひとつだと言及した寺田氏。最近ではF1が2025年からタイヤをワンメイク供給するメーカーを募集。入札の結果、落札したメーカーについては6月に発表されると見込まれているが、現行サプライヤーのピレリ以外にも、かつてF1にタイヤを供給していたブリヂストンも2025年からの供給に関心を持っているのではないか……そんな報道も一部ではなされていた。

 モータースポーツの強化を目指しているというのはすなわち、F1を視野に入れているということなのか? これについてモータースポーツ企画・推進部 モータースポーツオペレーション課 課長の鈴木栄一氏は現時点で回答できることはないとしながらも、ブリヂストンはF1を含めたグローバルなカテゴリーの検討・調査をしていると語った。

「F1も含めたグローバルなカテゴリーで何をどういう風に供給するのが我々のモータースポーツ活動として最適なのかは、常に考えています」

「そういうところに関するリサーチは当然しています。ただ、そうすると『ブリヂストンは(F1参戦に)興味がある』という書かれ方もしがちですよね」

 かつてはF1やMotoGPなど、世界最高峰のカテゴリーに数々参戦し、実績を残してきたブリヂストン。今後のグローバルカテゴリーの進出に向けては「将来的にはやっていきたいと思っており、色々検討を進めているところです」とのことだ。