F1モナコGPの週末、クラッシュによりコース上に止まったメルセデスとレッドブルのマシンが、クレーンに吊られて片付けられるというシーンがあった。これにより、これらのチームがどのようにマシンの開発を進めているか、その一端を垣間見ることができた。

 モナコGPの土曜日フリー走行3回目、メルセデスのルイス・ハミルトンがミラボーのアウト側にクラッシュするというシーンがあった。このマシンを片付ける際、コースマーシャルはW14をクレーンで吊るし、コース外に排除した。

 これはメルセデスにとって実に厄介なモノだ。昨シーズンからF1は、ダウンフォースの大部分をフロア下で稼ぐようになったため、フロア下はライバルチームには絶対に見られたくない部分である。しかし今回の事態により、メルセデスはフロア下のデザインを、世界中に向けて晒してしまうことになった。

 チーム代表のトト・ウルフは、この一件について「シルク・ドゥ・ソレイユの演技」のようなモノだと語った。

 特にメルセデスとしては最悪のタイミングだった。今回彼らは大規模なアップデートを投入。フロアもそのひとつであり、まさに出来上がったばかりの最新のフロアを、ライバルに見られてしまったのだ。

 この数シーズン、各チームはフロア下のデザインをひた隠しにしてきた。しかしモナコは、市街地を舞台に開催されているグランプリであるため、場所によってはマシンを宙吊りにして、コース外の安全な場所に移動させなければならない。

 今回ハミルトンがクラッシュしたミラボーはまさにその典型的な場所で、カメラマンたちの格好の餌食となってしまったわけだ。


 なお今回フロア下を見られてしまったのは、メルセデスだけではない。レッドブルのセルジオ・ペレスも、予選Q1でターン1”サンテ・デボーテ”でクラッシュ。ハミルトンのマシンと同じように宙吊りにされ、フロア下が撮影されてしまうことになった。

 今回撮影された写真を見ると、メルセデスは現在の新しいレギュレーション下で採った方向性について、いくつかのことが見えてくる。

 メルセデスは、昨年のモノと比較すると、進歩を遂げているように見える。ライバルのデザインからヒントを得て、フロアの各所にそのアイデアを取り入れているのだ。

 例えば後方車体中心部のキールに段差がつけられている点がそれだ。これは、車高が変化した時に、気流の安定性を向上させることを目的にしている。

 ただ今回撮影された写真は、”とある日のスナップショット”にすぎない。マシンのデザインは常に変わるモノ。つまり次戦では大きくことなっている可能性も存在しているのだ。

 なお”晒し者”となってしまった当事者の後の反応だが、あまり大々的に気にしている素振りは見せていない。

 特に現在最強のレッドブルのヘルムート・マルコは“好ましくない”としつつも「フロアだけではない。フロントウイングやリヤ周りと連動しなければならない。全てが連動している。フロアだけよりも、ずっと複雑なんだ」と、今回のフロア写真を見ただけでどうこうできるものではなく、ライバルチームがパフォーマンスを再現することは難しいという考えを示している。

 なおスペインGPの持ち込まれたマシンを見ると、早速レッドブルはフロアエッジに変更を加えている。まさにモナコで撮られた写真は”とある日のスナップショット”にすぎないということを、まざまざと思い知らされる。