6月6日(火)に行なわれたル・マン24時間レースのピットストップチャレンジで、”ガレージ56”からの出場となるヘンドリック・モータースポーツ(HMS)が優勝した。

 ガレージ56は、ル・マン24時間を主催するACOが”未来の技術”を持つ革新的マシンのために設けた特別参戦枠。今年はHMSが、NASCARとシボレー、IMSA、グッドイヤーと共同で現行NASCARカップカー”Next Gen”シボレー『カマロZL1』改良版を投入し、同枠で参戦する。

 特別参戦枠であるHMSは、ル・マン24時間を単独クラスで走ることとなるため、総合優勝やクラス優勝を目指すことはできない。ただ、ピットストップチャレンジではGTEクラスに組み込まれ、HMSのピットクルーは手動ジャッキで出場した唯一のチームであるにも関わらず、16チームのライバルを抑えて優勝。総合順位でも5位となった。

 フロントタイヤチェンジャーのドーソン・バッカス、リヤタイヤチェンジャーのマイク・モス、ジャッキマンのドノヴァン・ウィリアムズ、フロントタイヤキャリアのコディ・フレンチ、リヤタイヤキャリアのリウス・モアヘッドの5名は、普段はHMSからNASCARカップシリーズで戦うクルーたち。彼らは4本のタイヤを10秒364で交換し、98号車ノースウェストAMRを0.12秒差で上回った。総合トップの93号車プジョーからも0.3秒落ちというタイムだった。

 HMSのピットクルーコーチであるエヴァン・クレツカは、ピットストップチャレンジでのクラス勝利について次のように語っている。

「今回は最速のストップだったので驚いたが、とても嬉しかった」

「我々がジャッキを使ってマシンを上げていることに、ファンがとても感心しているのが分かる」

「彼らの笑顔を見ることができた。ファンのために素晴らしいショーを行なえた」

 さらに驚くべきことに、ガレージ56として招集されたクルーが競争の場に置かれるのはこれが初めてのことだった。

「この8ヵ月間、我々はこのチームを結成し、ずっと共に行動してきた」とクレツカは言う。

「そして時を共にすることで、どういうチームがル・マンに挑むのかは理解していた。しかし我々は彼らのスピードを上げていく必要があった」

 また、ジャッキマンとして参加したウィリアムズは次のように語る。

「HMSとして、我々の家族、アメリカ、そしてNASCAR全体を代表できる特別な瞬間だ」

「我々はトレーニングに従って、本能の赴くままに行動した。僕らはガレージを出て、力を発揮しただけで、あまり深くは考えていなかったと思う」

「それがスポーツの特別なところだ。僕らはみんな、アスリート的バックグラウンドを持っていて、周囲の疑念を打ち消す、集中する、話題の中心にいる時に本能に頼ることができるんだ」

 HMSは、2009年のF1世界チャンピオンであるジェンソン・バトン、7度のNASCARカップ王者であるジミー・ジョンソン、2010年のル・マン24時間で総合優勝経験を持つマイク・ロッケンフェラーの3名体制。彼らがNASCARカップカーのステアリングを握り、100周年を迎えた今年のル・マン24時間を走ることとなる。