今年で100周年を迎えた記念すべきル・マン24時間レース。そのハイパーポールでは、50号車フェラーリ『499P』を駆るアントニオ・フオコが、3分22秒982を記録してポールポジションを獲得した。ただそのタイムは、フェラーリ陣営としても驚きの結果だったという。

 ル・マン24時間レースのポールポジションを決める”ハイパーポール”セッションでフオコが記録したタイムは、2番手に並んだ僚機51号車のアレッサンドロ・ピエール・グイディが記録した3分23秒755より0.7秒以上速いモノ。昨年のポールシッターであるトヨタ8号車のブレンドン・ハートレーは、ポールタイムに1.469秒及ばず3番手となった。

 フェラーリのスポーツカー・レーシング・ディレクターを務めるフェルディナンド・カンニッツォはセッション後、驚きをもって次のように語った。

「正直なところ、このタイムは予想していなかった」

「我々としてもベストなマシンを用意できたが、アントニオが最高のラップを決めてくれたのだ」

「彼に良いマシンを与えられてとても嬉しく思っている」

 またカンニッツォは、予選上位8台で争われた30分間のハイパーポールにおけるチーム戦略も高く評価している。

 彼はハイパーポールでのタイム計測プランについて、最初のアタックではフオコがピエール・グイディにトウを与え、2セット目のニュータイヤに切り替えてからは逆に、ピエール・グイディがフオコの前で走ったと説明している。

「ハイパーポールでの戦略にはとても満足している」とカンニッツォは言う。

「我々はトヨタ勢の後ろに出て引っ張ってもらうことにしたが、我々のマシンもお互いに助け合っていた」

 そうした戦略もあり、最初のタイム計測ではピエール・グイディが3分23秒897を記録して暫定トップに立ち、フオコは計測2周目に3分23秒905を記録した。

 フェラーリ勢が一度ピットインして以降、フオコはトウを得たこともあり、自身のタイムを1秒以上上回る3分22秒982を記録した。

 サポートに回ったピエール・グイディも3分23秒478までタイムアップを果たすも、こちらはトラックリミット違反によってタイム抹消に。結果、3分23秒755が自己ベストとなった。

 フェラーリは、世界耐久選手権(WEC)ハイパーカークラス参戦初年度ながらも、100周年を迎えた記念すべきル・マンでフロントロウを独占。フェラーリ・スポーツカー・レーシングのアントネッロ・コレッタ代表は、この予選結果について「信じられない瞬間だ」と称えている。

 しかし、彼は本番はこれからだと警戒を緩めていない。

「これはル・マンでの長い道のりにおける最初の一歩に過ぎない」とコレッタは言う。

「レースでは状況がかなり変わってくる。予選と決勝では話が違うよ」

「レースで重要なのは信頼性。ここからが本当の勝負になる」

 また、ワークスチームとして50年ぶりにル・マンのプロトタイプカテゴリーに復帰したフェラーリが、旧LMP1時代から遡ってル・マン5連勝中のトヨタを“追いかける立場”にいるということをコレッタは強調している。

「トヨタは我々よりも経験豊富であり、リスペクトする必要がある」とコレッタは言う。

「現時点では、トヨタが最強だということに変わりはない」

 今年のル・マンは、6月11日(土)の10時30分〜10時45分(日本時間17時30分〜17時45分)にかけてウォームアップ走行を行なった後、16時00分(日本時間23時00分)に24時間の決勝レースのスタートが切られる。