F1データ分析|歴史的ハイペースで勝利を積み重ねるフェルスタッペン。最短なら日本GPでチャンピオン決定! ペレス以下には既に自力王者の権利なし
前半戦で圧倒的な強さを見せたのがレッドブル。12戦全てのレースを制し、開幕からの連勝新記録を樹立してみせた。しかもそのうち、なんと10勝をマックス・フェルスタッペンが記録。フェルスタッペンは昨年も15勝を挙げ、シーズン最多勝の新記録を樹立してみせたが、今季はそれを上回りそうなハイペースで勝利を重ねている。
そうなってくると気になるのは、いつチャンピオンが決まるのかということだ。
1992年、圧倒的な強さを誇ったウイリアムズのナイジェル・マンセルは、8月16日に開催されたハンガリーGPで同年のタイトル獲得を決めた。これは全16戦中11戦目にしての載冠。割合で言うと、シーズンの68.75%を完了した段階でのチャンピオン決定だった。この68.75%という数字を、22レースで争う今シーズンにあてはめてみると、15.125レース目ということになる。
今シーズンは当初23戦が開催される予定だったが、エミリア・ロマーニャGPが開催中止となったため、第16戦シンガポールGPが今季15レース目となる。このシンガポールGPでタイトルを決めれば、フェルスタッペンはマンセルよりも早く載冠を果たすことになるが、ここでタイトルを決するのは不可能である。
現時点でフェルスタッペンが最速でチャンピオン獲得を決められるのは、計算上では今季16レース目(第17戦)の日本GPである。
フェルスタッペンは第13戦ベルギーGPまでの間に、314ポイントを稼いだ。残りの10レースで獲得できる最大のポイント数(決勝での優勝とファステストラップポイント、スプリント1位)の合計は284であるため、現時点で30ポイント以上を獲得しているオスカー・ピアストリ(マクラーレン/ランキング11番手)以上のドライバーは、今季のチャンピオン獲得の可能性がまだ残っているということになる。
ただ、夏休み明け初戦のオランダGPをフェルスタッペンが制し(母国だし!)、ファステストラップを獲得したとすれば、その時点でチャンピオン獲得の可能性が残るのは、82ポイント以上を稼いでいるドライバー……という風に、グッと条件が厳しくなる。現時点で言えば、ランキング7番手のカルロス・サインツJr.(フェラーリ)以上に絞られる。
そのように計算を進めていくと、シンガポールGPの時点で186ポイント以上、日本GPの時点で238ポイント以上というように条件が絞られていく。
現時点でランキング2番手のセルジオ・ペレス(レッドブル)は既に189ポイントを獲得しているため、仮にペレスがこの先1ポイントも獲得できなかったとしても、シンガポールGPの時点でチャンピオンが決まることはない。しかしフェルスタッペンが日本GPまで全戦勝利&ファステストラップを記録し、なおかつその時点でペレスはじめ他のドライバーの中に238ポイント以上を獲得したドライバーがいなければ、フェルスタッペンの3年連続でのドライバーズタイトルが鈴鹿で決まるということになる。
日本GP以降に獲得できるポイントの最大数は180。フェルスタッペンは連勝+ファステストラップを記録し続けると、日本GP時点で418ポイントを獲得することになるため、ライバルたちは238ポイント以上を獲得していなければ、この時点で逆転は不可能ということになるわけだ。
■残りのレースでの獲得可能最大ポイント数
Rd13ベルギーGP:284
Rd14オランダGP:258
Rd15イタリアGP:232
Rd16シンガポールGP:206
Rd17日本GP:180
Rd18カタールGPスプリント:172
Rd18カタールGP:146
Rd19アメリカGPスプリント:138
Rd19アメリカGP:112
Rd20メキシコシティGP:86
Rd21サンパウロGPスプリント:78
Rd21サンパウロGP:52
Rd22ラスベガスGP:26
Rd23アブダビGP:0
■フェルスタッペンの”マジックポイント”は159?
ただ、これはあくまで最短の例。逆にフェルスタッペンがスプリントを含む全戦優勝+ファステストラップを獲得し、ペレスが2位を連続して獲得したら……という事例を考えてみよう。
もしペレスがオランダ、イタリア、シンガポール、日本と4連続で2位に入賞すれば、その時点での獲得ポイントは261まで伸びているということになる。一方フェルスタッペンが連勝+ファステスト獲得を続ければ418ポイント……両者の差は157ポイントという格好だ。前述の通り、日本GP以降で最大180ポイントを獲得できるため、ペレスとしてもまだまだ逆転の”可能性”は残っていると言える。
続く第17戦カタールGPのF1スプリントでフェルスタッペンが1位、ペレスが2位となった場合、両者の点差は158ポイントに開く。しかしそれ以降で最大172ポイント獲得できるため、まだ逆転の可能性を残す。
しかしカタールGPの決勝レースでフェルスタッペンが優勝+ファステストラップを記録すると、その得点は452ポイント。その時点で残りのレースで獲得できる最大のポイント数は146。ペレスは2位となっても286ポイントまでしか伸ばすことができず、フェルスタッペンとの差は166……この時点でフェルスタッペンを逆転するのは不可能ということになり、5レースを残して3年連続のタイトルが決まる。
なお現時点で既に、ペレス以下に自力チャンピオンの可能性は残されていない。オランダGP以降で獲得できる最大得点数は284である。対して、全てのレースで2位となれば、201ポイントを獲得することになる。つまり現時点で83ポイント以上差をつけられているドライバーは、残りのレースで全て優勝しファステストラップを記録したとしても、フェルスタッペンが全て2位に入れば逆転することはできない。ランキング2番手のペレスでさえすでに125ポイント差であり、自力でのタイトル獲得は不可能なのだ。
ちなみにフェルスタッペンは2位を続ければ(スプリント含む)、ペレスが全てのレースで優勝+ファステストラップを記録しても、第21戦サンパウロGPでチャンピオンを決めることになる。
これを数値として表すと、残りのレースでのフェルスタッペンの獲得ポイントと2番手のドライバー(現時点ではペレス)が獲得可能なポイントから取り逃したポイント数の合計が159となった際に、フェルスタッペンの今季のタイトルが決まるということになる。つまり、マジックポイント159である。
本稿での計算は極端な事例ではあるものの、フェルスタッペンのこれまでの勢いを考えれば、そう大きくは外れないはず。タイトル三連覇の時が刻一刻と迫っている。