岩佐歩夢は、持ち前の分析力を武器にFIA F2での2年目をDAMSのドライバーとして戦っており、残り3ラウンドという段階で、F1昇格の可能性が見えるドライバーズランキング3番手につけている。

 F2参戦開始以降は冷静さに加え、状況に応じてアグレッシブな走りに転じることができる強さを身に着け、今季はそれにさらに磨きをかけたように思える。

 motorsport.comではこれまで、ドライバーの感覚的な部分を説明してもらう連載やインタビューを通じてレーサー岩佐を追ってきたが、その中で彼が寝ても覚めてもクルマのことばかり考えていることに気付かされた。

 大阪府生まれの岩佐は、両親がシビックレースに参戦し、祖父もレーシングチームを運営やレースパーツの販売をしていたという生粋の“レース一家”の出自。シビックや箱車を12歳頃からミニサーキットで走らせ、今もF2のレースがない時はさまざまなカテゴリーの走行データを眺めているというレースに対する徹底っぷりが明かされている。

 以前、岩佐に幼少期の頃について尋ねた際、彼は当時、F1やGTレースよりもドリフトに興味を持っていたことを明かしていた。

「その頃唯一自分が乗っていない大会で興味があったのはドリフトでした。名阪スポーツランドでカートのレースがドリフトの大会と併催された時には、(カートの)走行が終わったらすぐ、そっちのスタンドへドリフトを観に行ったりしていました」

「ドリフトやチューニングカーの動画や雑誌は小さい頃から観ていました」

 現在も、ドリフトやチューニングカーなどへの情熱は失われていないようだ。

 どんな人でも、常に同じことだけに集中していると、息が詰まってしまうこともあるだろう。そんな時、少し違うことをして気分転換をし、改めて集中し直すというのは普通のことだ。岩佐は前述のように、「息抜きとしてデータを見る」などと語っていたが、本当にそんなことで息抜きになるのか? 改めてそう尋ねると、岩佐は次のように語った。

「息抜きに関して言えば、本当にクルマに関することが最大の息抜きです」と岩佐は言う。

「ドライブはそこまでしないかもしれませんが、トレーニングの合間など、YouTubeでチューニングカーやカスタムカーの動画をよく観ています。特にチューニングカーのタイムアタックや、ドリフト動画ですね」

 “本業”のレースでの流れが悪い時は、モータースポーツだけでなくクルマからさえも離れたくならないのだろうか? さらにそう訊くと、岩佐は次のように自身の気持ちを語った。

「逆ですね。なぜダメだったかがクリアになるまで、他のことは一切考えられません」

 岩佐はそう語る。

「そこがクリアにならなかったら、次のレースで100%のパフォーマンスを出せる気がしません。僕はどちらかというとかなり心配性なので、何が悪かったかが明確にならないと先に進めません」

「実際、この前(スパ・フランコルシャン戦)のフィーチャーレースも自分のミスで終わりました。自分のミスだということは分かっていたのですが、『どうしたら良かったのか』『どうしたら再発防止できるのか』というのがクリアになるまで考え続けました」

「基本的にはほったらかしにはできません」

 岩佐は目下のレースに照準を絞り、F2で勝つことに集中した日々を過ごしているため、現時点ではドリフトやチューニングカーなどの趣味を何かしらの形にすることは考えていないようだ。岩佐がチューニングカーのタイムアタックやドリフトに挑戦する日は訪れるのだろうか?