F1オランダGPの決勝レースをリタイアで終えたアルファロメオの周冠宇。しかしレース序盤は戦略がバッチリと決まり、一時2番手を走行するシーンもあった。周はレース後、リタイアに終わったのは残念だったが、ウエットコンディションではかなりのパフォーマンスを発揮できたと振り返った。

 オランダGPは決勝スタート直後にサーキットのコース上を大雨が濡らし、大混乱のレースとなった。その降り始めた雨にいち早く反応し、複数台のマシンが1周目終了と同時にピットイン。ドライタイヤからインターミディエイトタイヤへと履き替えた。

 しかしこれは各チームとも予定外のピットストップだったため、やはり大混乱。インターミディエイトタイヤが用意されていなかったり、タイヤの脱着に戸惑ったり、あるいは2台のマシンを同時にピットインさせたため詰まってしまったり……1周目終わりでインターミディエイトを履くのが最良の判断だったわけだが、作業に手間取ったことで大きくタイムロスするマシンが多かった。

 そんな中、アルファロメオはしっかりと作業をこなし、周をコースに送り出した。この結果、周はレッドブルのセルジオ・ペレスに次ぐ2番手に浮上。1周目にピットインした7台のマシンの中で、作業に手間取るなどしてタイムを失わなかったのは、ペレスと周の2台のみである

 そのポジションはすぐにもう1台のレッドブルであるマックス・フェルスタッペンに明け渡すことになったが、長く入賞圏内を走った。

 アルファロメオのマシンは今週末は初日からパフォーマンスが低調であり、とても入賞を争える出来ではなかったが、それでも戦略を駆使して、チャンスを掴もうとしていたのだ。しかも、ドライでは苦しんでいたC42は、ウエットコンディションではまずまずのパフォーマンスを発揮した。

「いい順位で多くの時間を過ごすことができた、忙しいレースだった」

 周はレース後にそう語った。

「ウエットではかなり強かったんだけど、ドライになるとすぐ、トップ10に留まるようなペースを発揮することはできなかった。セーフティカーも、僕らの助けにはならなかったんだ」

 チーム代表のアレッサンドロ・アルニ・ブラビは、この戦略について次のように説明する。

「我々は予選やレースで競争力を発揮することはできなかった。それが、我々が集中する上で鍵となる要素だったんだ」

 そうブラビ代表は言う。

「チームはあらゆることを試した。変化する状況の中で戦略面で適切な判断を下し、周と共に良いポジションに立つことができた」

「あらゆるシナリオに対処するために、バルテリには逆の戦略を試した。彼は、ドライタイヤのまま走り続けたんだ」

「我々のメカニックたちは、難しいコンディションの中でも全てのピットストップを正しく行ない、良い仕事をしてくれた」

 ブラビ代表も、路面が乾いた後に戦う術はなかったと語る。

「残念ながら、最終的にはマシンのパフォーマンスが足りなかった。コンディションが通常に戻った時には、ポイント圏内に残ることはできなかったんだ」

 なお周は最終的には、再び降り出した雨に足をすくわれ、ウォールにクラッシュ。リタイアに終わった。

「バリアにクラッシュしてレースを終えるなんて、決して良いことじゃない。怪我をしなかったことが大事だけど、それまではまともなレースをしていただけに残念だ」

 そう周は言う。

「突然土砂降りになって、僕としても注意する必要があった。僕はターン1に、雨が降り始めて最初に辿り着いた。状況を考え、プッシュしていなかったんだけど、ブレーキを踏むとすぐにマシンがアクアプレーニングを起こしてしまった」

「本当に何もできなかった。スピードを落とすことも全くできず、ただウォールに真っ直ぐクラッシュするしかなかったんだ」