F1イタリアGPは、フェラーリのカルロス・サインツJr.とシャルル・ルクレールが白熱の3位争いを繰り広げたが、チーム代表のフレデリック・バスールはふたりにバトルをさせた理由について説明した。

 フェラーリは、サインツJr.がポールポジション、ルクレールが3番手から決勝レースに臨んだ。サインツJr.は懸命にフェルスタッペンを抑えたが、15周目にオーバーテイクを許してしまった。

 その後は、サインツJr.にルクレールが接近し、バトルを展開。しかしふたりが戦う間にセルジオ・ペレス(レッドブル)がギャップを縮め、この3台の争いがレース後半の大きなトピックとなった。

 しかし最終的に、ペレスがフェラーリ2台を攻略し、レッドブルがワンツーフィニッシュ。ファイナルラップまで続いたルクレールとのバトルを制したサインツJr.が3位となった。

 もしフェラーリがチームオーダーでふたりのバトルをコントロールしていれば、タイヤを消耗することもなく、ペレスとのバトルを有利に展開できていたのではないかというのは、レースを見ていた者なら浮かぶ当然の疑問だろう。

 なぜチームオーダーを出さなかったのかと訊かれたバスール代表は、メディアに次のように語った。

「この件に関しては、私が最終判断を下したかった。もし私がポジションを固定していたとしても、全く同じような質問を受けただろう。なぜ状況を固定するのか? 確かにその方が最後にコメントするのがずっと簡単になるだろう。だがそうする(チームオーダーを出さない)のが、みんなやティフォシのサポートに感謝するためのベストな方法だったと思う」

「それにラスト5周で状況をフリーズさせるのはそれほど快適なモノではなかった。私は彼らを信頼しているが、リスクはないようにと伝えた。それは常に相対的なモノだ。ノーリスクという考え方も相対的なものだと思う」

「しかしそれは意見のひとつであり、私はこの決断と今日のドライバーたちの仕事を誇りに思っている」

 サインツJr.、ルクレール、ペレスの3台が連なって走行していた際、ルクレールはDRSを使うことができたため、ペレスからなんとかポジションを守ることができていた。しかし、サインツJr.がギャップを広げたことでルクレールはDRSを失い、あっさりとペレスに抜かれてしまった。

 この時サインツJr.がペースを調整し、ルクレールのDRSを維持するという選択肢もあったはずだ。この件について、バスール代表は次のように説明している。

「ああ、戦略的な決定はできたかもしれない。だが一方でシャルルがチェコ(ペレス)に抜かれたとしても、もしカルロスが引き離すことができたらチェコに対する良いディフェンスにもなっただろう。私はこのような状況で、DRS圏内に留まるというのはあまり好きではない」

「ドライバーにとっても、プッシュするのはかなり難しいが、コンマ9秒のところを走り続けるのも簡単ではないんだ」

 ペレスがフェラーリの2台を抜いていった後は、残る表彰台の1席をサインツJr.とルクレールが争うことになった。

 このふたりはファイナルラップまで激しいバトルを展開。何度もターン1へのブレーキングでタイヤから白煙が上がった。特にファイナルラップではルクレールが激しくタイヤをロックさせ、危うくコントロールを失うところだった。

 これはチームがドライバーたちに希望していた、リスクのない走りだとは言えないだろうが、バスール代表はルクレールのファイナルラップについて言及を避けた。

「コメントするつもりはない。私はこれについて極論を話したくはない。もしポジションを固定していたら、レースの精神に反するなどと言われただろう。でも最終的にはレースを終えることができたし、この結果には何よりも満足している」

 チームにとっての聖地モンツァで、レッドブルにワンツーフィニッシュを許したフェラーリだったが、バスール代表はそれでも今季最高の週末だったと評価した。

「全体的には今年最高の週末だと思う。週末を通じて力強いペースを維持できたからね。バクーでの予選(ルクレールがポール獲得)もベストだった。今週末は1番手と3番手だった。レッドブルのペースが我々より上だったとしても、レース中かなりの時間、競り合うことができた。予選と決勝だけでなく、週末の準備段階でもそうだった。これは残りのシーズンにとってもいい教訓になる」

「感情的には、私にとっても大きなモノだったと思う。ご想像の通りこの1週間はずっと、モンツァだからといって他の場所より多くのポイントを獲得することができるわけではないから、少し気楽に行こうと言っていたんだ」

「でも予選でシャルルがフィニッシュしたときからグランドスタンドが素晴らしい状況だったのを覚えているし、今日のスタートとフィニッシュラインでは、普通とは言えないような感じだった」