【MotoGP】マルケスはホンダとの関係を終わらせる? 一挙一投足が注目集める6度王者、早期契約破棄を示すヒント
ホンダから2013年にMotoGPクラスへデビューし、2019年までに6回のタイトルを勝ち取ってきたマルケス。2024年までの長期契約を締結するなど、両者は蜜月関係だと思われてきたが、マルケスがホンダとの契約を早期に破棄する可能性が取り沙汰されるようになった。
原因がホンダの大苦戦にあることは言うまでもない。ただマルケスは移籍の憶測や噂に対して、自身が“嘘つき”にならないよう慎重に言葉を選んで対処してきている。
ここ数週間でも彼は「来年もホンダに乗るのか?」という質問を数多く受けてきたが、それに対し「僕には契約がある」という同じ答えを彼は返してきた。だがこれは必ずしも彼が2024年も契約を履行するという意味ではない。
ホンダ側は、仮にマルケスがホンダを離れたいと言うならば、それを妨げるつもりはないと明かしている。HRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長は以前「当然引き止めたい選手です。でも、最後に決めるのは彼です。もし離れると決断したならば、引き止めることはありません」と語っていた。
ホンダとヨーロッパ勢との差は大きなモノとなっているが、マルケスを疲労させている要素にはHRCの”頑なさ”もあると見られている。そして彼は9月のサンマリノGP終了後に行なわれるミサノテストでの進歩が、自身の将来を決める重要なモノとなると語ってきた。
9月11日のミサノテストでホンダは、2024年型RC213Vのプロトタイプを投入する予定だ。しかしホンダとマルケスの関係がどうなるのかの核心は、既にこの新型バイクにはないと見られており、同時にホンダライダーが要求しているようなマシンコンセプトの変更になるとは考えられていない。
マルケスの要求はエンジニア陣の強化・欧州化?
motorsport.com/英Autosportの取材では、マルケスの残留条件がバイクの重要な領域における専門の技術スタッフのリクルートだとされていること、そしてHRCもそれを理解していることが分かっている。言い換えると、マルケスはドゥカティやアプリリア、KTMなどの躍進を可能にしたような欧州のエンジニアを求めていると言える。
ドゥカティ躍進の立役者であるジジ・ダッリーニャも交渉のターゲットに挙げられていたようだが、流石に彼がドゥカティを離れることは難しいはずだ。
そしてホンダのチームマネージャーであるアルベルト・プーチは、エンジニアのリクルートの必要性を上層部に説き、マルケスを引き留めようとしてきた。
プーチはオーストリアGPでエンジニア市場に目を向けることのゴーサインを得ていることが分かっており、これらは渡辺社長の監督下で行なわれている。
ホンダとしても、マルケスが2日半の間に5回も転倒を重ね、決勝レースを走らないという判断が下されたドイツGPを経て、アプローチの変化を加速させている。しかし現時点の問題は、プーチにとってはシーズンが既にかなり進んでいることや、目当ての相手を説得する事が難しいことから、策を講じる余地が殆ど残っていないことにある。
様々な情報を考慮すると、論理的にはマルケスは最終的にホンダを去るかどうかにかかわらず、彼が2024年に向けてホンダ以外の選択肢を手に入れるための地ならしを行なっていると考えることができる。
そして、ほとんどの兆候は、現在ではグレシーニを指している。
■需要MAXなドゥカティのシート……グレシーニの来季の席は今も未定
グレシーニ……2023年からドゥカティ陣営に加わったこのチームには、弟のアレックス・マルケスが在籍している。ただその事はともかく、グリッド上で最も需要の高いドゥカティのマシンが、空席のまま放置されているというコト自体が、非常に珍しいことだといえる。
フランコ・モルビデリがヨハン・ザルコの後任としてプラマックへと加入することや、ルカ・マリーニがVR46に留まることを、関係者が認めていることを考えれば、なおさらだろう。
そして来季の放出が濃厚なファビオ・ディ・ジャンアントニオのグレシーニのシートでは、既に考えられていた他候補の可能性が潰えているのだ。Moto2のジェイク・ディクソンとトニー・アルボリーノは共に契約を更新し同クラスに残留し、さらにジャンアントニオも既にMoto2のFanticと交渉を行なっているため、MotoGPクラスに戻る可能性は無いと見られている。
そして前述の全てに口を閉ざしているグレシーニのマネージャー達の存在に加え、ドゥカティがデスモセディチGPにマルク・マルケスが乗る可能性が現実的なモノと考え始めていることは、決定的な要素だろう。
ドゥカティのスポーティングディレクターであるパオロ・チアバッティは、グレシーニのライダー起用について、こう語っている。
「グレシーニが誰と契約をするか、それを決めるのはチーム次第だ。もちろん我々は提案をすることはできる。だが、それだけだ」