F1分析|母国イタリアGPをリードしたフェラーリ。しかしレッドブルとの差はまだまだ大きい……昨年よりも顕著になったデグラデーション
今年初めてレッドブルに土をつけるチームが現れるまであと僅か……そんなふうにも見えるレースだったが、そのペース推移を見ると、レッドブルとフェラーリの差はまだまだ大きいということが分かる。
今回のレースでは、ほとんどのマシンがミディアムタイヤを履いてスタート。そしてレース中盤にハードタイヤに交換し、1ストップで走り切るという戦略が一般的だった。たしかに、ハードタイヤでスタートし、レース後半にミディアムタイヤを使ったドライバー、2ストップで走り切ったドライバーもいたが、上位勢はミディアム→ハードの1ストップであり、これが正解の戦略だったと言って差し支えないだろう。
今季のフェラーリは、従来の弱点のひとつだったタイヤのデグラデーション(性能劣化)が改善傾向にあった。しかし今回はそのデグラデーションの弱さが露呈。スティント直後こそ、レッドブル勢に太刀打ちでき、サインツJr.がフェルスタッペンを抑え込んだが、次第にその余裕はなくなっていった。
レッドブルの余裕は明らか。フェラーリとレッドブルのレースペース比較
このグラフは、レッドブルの2台とフェラーリの2台の決勝レース中のペース推移をグラフ化したモノである。
その第1スティント、赤い線で示したフェラーリのペースは、下落の一途をたどっていることがよく分かる。走れば走るほどペースは遅くなっていき、15周目にはフェルスタッペン(青の実線)に先行を許してしまうことになった。
フェルスタッペンはフェラーリ勢を抜くと、一気にペースアップ。そのペースがV字回復しているのが、グラフからもよく見て取れるだろう。チームメイトのセルジオ・ペレス(青の点線)も同じ傾向を示しており、そこからもレッドブル勢の余裕が感じられる。
第2スティントでは各車ともハードタイヤを履いたが、このタイヤでのデグラデーションは、また違った形で現れた。
タイヤを履き替えた直後、フェラーリ勢はレッドブル勢とそれほど違わないペースで周回を重ねた。しかし41周目頃、このハードタイヤを履いて20周もすると、一気に1秒近くペースダウン。その後どんどんペースを落としていった。
フェルスタッペンもレース終盤にはペースを落としているが、これはパワーユニットの温度が上がりすぎないようにマネジメントしていたからであり、タイヤのデグラデーションとは無関係。実際ペレスは、レースの最後までペースを維持して走り切っており、そこにフェラーリとの差が見える。
フェラーリ勢のデグラデーションは、今シーズンは解決の兆しが見えると冒頭で申し上げた。しかしモンツァに限って言えば、昨年よりも悪くなっているかもしれない。
昨年よりも問題は悪化した?2022年のレースペース
上は昨年のイタリアGPでの、フェラーリとレッドブルのペース推移を示したグラフである。これを見ると、フェラーリのペースにはデグラデーションの傾向が見えないのがお分かりいただけよう。それはルクレール、サインツJr.共にである。
今シーズンのイタリアGPに持ち込まれたタイヤは、C3〜C5という組み合わせであり、C2〜C4だった昨年よりも1段階柔らかくなっている。そのため、デグラデーションが増すのは当然というご指摘もあるかもしれない。しかし結局レースで使われたのは、昨年も今年もC3(2023年ハード/2022年ミディアム)とC4(2023年ミディアム/2022年ソフト)である。
これについてはサインツJr.も認めている通り、フェルスタッペンを押さえ込むために、かなりタイヤを使ってしまっていたからだと言えるだろう。
またレース中にフェルスタッペンが「前のクルマは滑っている」と無線でサインツJr.の走りについて指摘したが、ダウンフォースレベルという点で、昨年以上に削られていたという側面もあろう。ただ、最高速の面で言えば昨年と比べてそれほど差があるように見えないため、空気抵抗との関係性が低いフロア下でのダウンフォースがかなり減り、マシンが横滑りしているのかもしれない。
今季フロア端の高さは、ポーパシング発生への対策として15mm引き上げられているが、その影響が残っているようにも思える。