今季、ひとり圧倒的な強さを見せるレッドブルのマックス・フェルスタッペンについて、メルセデスのトト・ウルフ代表は、レッドブルRB19はフェルスタッペン好みのマシンに仕上げられているのではないかという論調を展開した。

 これについてレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表が反論。特定のドライバーのみに絞った開発をチームが行なっていると考えるのであれば、マシン開発のことを「全く分かっていない」と語っている。

 ザントフールトで行なわれたオランダGPの予選でフェルスタッペンはチームメイトのセルジオ・ペレスに1.3秒差をつけてポールポジションを獲得。これを受けてウルフ代表は、フェルスタッペンとペレスの差を「奇妙」で「異様」なモノだと指摘したのだ。

 またウルフ代表は、フェルスタッペンについて「チームメイトをことごとく撃破してきた」として「コントロールは非常に難しいが手懐ければ速いというマシンを、自分の周囲に作り出す能力」を持っていると語っている。

 ウルフ代表の発言が意味するところは、レッドブルがペレスを犠牲にしてフェルスタッペンのドライビングスタイルに合うようRB19を開発していったということだ。

 しかしフェルスタッペンは、自身のためにマシンが“オーダーメイド”されているという意見は「デタラメだ」と意に介していない。

「僕は可能な限りマシンを速く走らせるだけだ」

 オランダGPから1週間後のイタリアGPでフェルスタッペンはそう語った。

「それが自分の好みだからって、フロントエンド(のグリップ)をもっと寄越せと言うためにそこにいるわけじゃない」

「僕はただ、最速のクルマをデザインしてくれと言っているだけだ。僕はそれをドライブする。どの年のクルマも毎年少しずつ違うんだ」

「みんな、僕のドライビングスタイルについて聞いてくるけど、僕のスタイルは特定のものではない。クルマを速くするために必要とされるスタイルに適応しているんだ」

 そしてウルフ代表のコメントを踏まえて、motorsport.comがフェルスタッペンとペレスの違いについてホーナー代表にコメントを求めると、彼はウルフ代表が“無知”を晒したと語っている。

「マックスと全く同じ意見だ」とホーナー代表は言う。

「もし我々がひとりのドライバーを中心にマシン開発を行なっているとトトが考えているのだとしたら、それはマシンとチームがどう進歩していくかを全く理解していない証拠だ」

「マシンをできる限り速くするために開発するのであって、速いマシンは時として難しいマシンでもある。歴史的にもそうだった」

「優れたドライバーは順応していくものだと思う。ウエットコンディションやミックスコンディション、様々なコンディションでそれが垣間見えると思う。エリートは順応が早いんだ」

「(フェルスタッペンの)貴重なスキルのひとつは、マシンからのフィーリングやグリップレベルに順応する能力だと思う」

「しかし特定のドライバーに合わせて何かを作るという方向性は確実にない」

「ただ、我々はできるだけ速いマシンを設計し、作ろうとしているだけだ。我々のツール、シミュレーション、風洞がその方向性を示してくれる」

 なおホーナーは、フェルスタッペンはRB19を馴染ませるために「マシンのツールを使って自分のスタイルに合わせている」と説明している。