先日、FIA会長のモハメド・ベン・スレイエム会長がWRC(世界ラリー選手権)アクロポリス・ラリーの際に、かつてWRCで活躍したスバルが選手権への復帰を検討していることを明かし、話題となった。これについては、WRCに参戦するチームからも好意的な声が挙がっている。

 スバルはWRCで輝かしい実績を残している。1995年からはマニュファクチャラーズ選手権を3連覇、コリン・マクレー(1995年)、リチャード・バーンズ(2001年)。ペター・ソルベルグ(2003年)をWRC王者に導いたが、金融危機の影響で2008年を最後に撤退した。

 前述のスレイエム会長のコメントは、トヨタ自動車の豊田章男会長との会話の中で出たもの。豊田会長は、WRCの参戦メーカーを増やすことに意欲的だ。

 またスレイエム会長は、スバルがWRCに復帰するとなった場合、スバルの主要株主であるトヨタがWRCレギュレーションに準拠したエンジン供給を支援するという可能性を示唆した。そしてスバル社内でプロジェクトのゴーサインが出た場合、復帰のタイミングは新レギュレーションとなる2027年となる可能性が最も高そうだ。

 スレイエム会長のコメントを受け、トヨタはmotorsport.comに以下の声明文を出し、スバルのWRC参戦はあくまでスバルの首脳陣が判断することだと強調した。

「チーム側としては、我々トヨタの会長である豊田章男と、FIAのベン・スレイエム会長がル・マン24時間の際にじっくりと話をしたことを確認している。その中で、WRCの参戦メーカーを増やすことについて話題となった」

「豊田会長がラリーへ情熱を注いでいることは周知の事実であり、彼はより多くのメーカーがWRCに参戦して欲しいと思っている」

「もしスバルがWRCに復帰すれば、近代のWRCを象徴するブランドが復活することになる上、我々としても日本のメーカーが加わることでよりエキサイティングなコンペティションになると思っている」

「とはいえ、そのような決定は当然ながらスバルの首脳陣が関係者間で協議の上で決めることである」

 トヨタのWRCにおけるライバルであるヒョンデとMスポーツも、スバルが復帰するならば歓迎すると表明している。

「良いことだ。将来的にエントラントが増えることはポジティブなニュースだ。政治的な話をするにはまだ早い」

 そう語るのは、ヒョンデのチーム代表であるシリル・アビテブールだ。彼はさらにこう続ける。

「スバルに限らず、我々は既にこのスポーツに参加している企業と繋がりのないOEM企業にも目をむけるべきだ」

「シュコダとシトロエンはラリー2にいるが、彼らがラリー1にステップアップするのを見てみたい。もちろんスバルも歓迎するし、ビジネスのためにも門戸を広げるべきだ。我々が目指すのは、スバルをはじめ、より多くの人をこの競技に加えることだ」

 そしてMスポーツのマネージングディレクター、マルコム・ウィルソンはこう語った。

「エントリーを増やすことは鍵になってくる。スバルに関しても間違いなくウェルカムだし、両手を広げて待っている」

「もっと多くのWRCラリー1マシンが必要だし、もっと多くのカスタマーが必要だ。ラリー1の最多出走台数は12台だったと思うが、なんとしても(常時)その数にもっていきたいね」

 WRCは現在、より多くのメーカーを選手権に誘致しようとしているが、現状フルワークスでエントリーしているのはトヨタとヒョンデだけだ。フォードは長年のパートナーであるMスポーツと組んで、セミワークスという形で参戦している。

 2027年のレギュレーション策定に向け、WRCはFIAと協力しながら各メーカーと協議を進めているが、WRCプロモーターのシニア・スポーツディレクターであるピーター・トゥールはスバルについて次のように答えた。

「(スバルが復帰するなら)素晴らしいことだ。しかし、我々がそれ以上コメントできることはない」

「FIA会長には、彼の人脈を活かして可能な限り協力して欲しいとお願いしている。他にも会長の協力を仰ぎたいところ(メーカー)があるのだが、その企業について言及できないことは理解してほしい」

「私ピーター・トゥールがメーカーに出向くのと、FIA会長が出向くのとでは大きな違いがある。どんな形であれ、サポートしてくれるのは本当にありがたい」