F1シンガポールGPは、カルロス・サインツJr.(フェラーリ)が巧みな戦術で優勝を飾ったが、チームはそれがすべてサインツJr.のアイデアだったと明かした。

 ポールシッターのサインツJr.は、レース序盤からレースをコントロール。タイヤをマネジメントしつつ後続を抑えてラップを重ねた。

 レース終盤はタイヤを変えたメルセデス勢が猛然と追い上げる中、サインツJr.は2番手を走るランド・ノリス(マクラーレン)を防御のために”活用”。チームに自分とノリスのギャップを逐一報告させ、時にはペースを落としながらノリスがDRSを使えるように調節。メルセデス勢にノリス攻略のチャンスを与えず、自らの優勝も守りきった。

 フェラーリは、チームメイトのシャルル・ルクレールを壁に使うことや、アンダーカットの回避を図るなど戦術的なマネジメントに協力したが、レース終盤のDRSを巡る判断はサインツJr.自身によるものだという。

「それはカルロスのアイデアだった」と、チーム代表のフレデリック・バスールは語った。

「明言はしたくないが、彼はノリスよりもメルセデスのほうがリスクが高いことを知っていた。ノリスとは同じタイヤだったし、1周目からほとんど同じペースだった。我々がタイヤをダメにしなければ、ノリスに関してリスクはそれほどなかった。ノリスをDRS圏内に留めたのはカルロスのクレバーな行動だった」

 サインツJr.は、もしメルセデスのどちらかがノリスをパスしたら、自分は間違いなく優勝を逃していただろうと確信している。

「プレッシャーが大きい時はいつも、とても厄介なんだ」とサインツJr.は言う。

「ロックアップもできないし、ひとつのミスもスナップも許されない。つまり、ランドがDRSに入ればオーバーテイクのチャンスがあるということなんだ」

「特にランドをターン16から17でディフェンスしていたラップがあって、その後ターン1〜2、3で彼にDRSを再び与えるためにスローダウンする必要があった。この試みが僕のレースを救ったと思う。もちろんランドの2位もね。これがなければ僕も含めて破滅していただろうからね」

「メルセデス勢がランドを追い抜いていたら、僕もかなり簡単に追い越されてしまっていただろう」

 サインツJr.はサマーブレイクが明けてから調子を上げており、イタリアGPでポールポジションを獲得。そして今回はシンガポールGPでポール・トゥ・ウィンを果たしている。

 サインツJr.は何が変わったのかを振り返ると、8月のエンジニアとのミーティングが重要だったと語った。

「マシンとドライビングの理解という点では、夏休み前には、既にまともなフィーリングがあったと思う」

「サマーブレイク中に、エンジニアのみんなと話し合ったんだ。『OK、週末をまとめ上げるために何ができるだろうか。僕らにはかなりペースがあるのは明らかで良い仕事もしているけど、これまでまとめ上げることができていない』とね」

「改善し、後半戦を一貫したパフォーマンスで始めるために何ができるか考えようとなった。今年は明らかにポテンシャルがあるんだからね」

「オランダはかなり良い週末になったよ。イタリアもほとんどパーフェクトだったし、今回もパーフェクトな週末だったと思う」

「仕事に取り組んで分析しているとき、今週末のようにスピードがあると報われたと思うし、嬉しくかつ誇らしくなるよ」

 なおバスール代表は、サマーブレイク明けからサインツJr.の持ち込みのマシンセットアップの出来が、週末を改善する鍵になっていたと考えているようだ。

「最大の違いは、彼は既にFP1の1周目から準備ができているということだ」

 バスール代表はそう語る。

「ザントフールトもそうだった。彼はFP1はルーキーに譲っていたため走っていないが、FP2の1周目から彼は準備ができていて、予選に向けベストな方法で準備していた」

「あまり多くのタイヤセットが無い中で週末を後退した位置から始めてしまうと、それは限界を超えなくてはならないということなのは明らかだ」

「チームにとっても、準備という意味ではこれができるベストなアプローチだよ」