メルセデスF1は先週行なわれたシンガポールGPで勝利まで後少しの位置に近づくなど進歩を示していた。ただチームとしては、今季マシンW14が改善していても、今季限りで“捨てる”ことにためらいはないと語った。

 シンガポールGPでメルセデスは、ジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンにアグレッシブな戦略を採らせ、勝利のチャンスが見える位置にまで接近していた。最終的に勝利こそできなかったが、今季マシンW14は序盤の大苦戦からしっかりと進歩していることを示していた。

 だがメルセデスは今季マシンW14の当初のコンセプトが間違いだったと認め、その変更を決断している。W14はそこから徐々に今のように速さを見せることもあるようになったが、チーム代表のトト・ウルフは、すでにメルセデスがW15の開発から良いフィードバックを得ているため、今の良くなりつつあるマシンを“捨てる”ことにもためらいはないと語った。

「我々はマシンが本当に速くとも、それをゴミ箱へ捨て、新しい旅に乗り出すつもりだ」

 ウルフ代表はそう語る。

「開発しているマシンからは励まされる兆候が見えており、我々の疑問に対する答えも得られていると思う。だから我々はこの結果を本当に前向きな姿勢で受け取っているんだ」

 なおウルフ代表は現行のマシンからはまだ学ぶべきことがたくさんあるとも付け加えている。

「これ(W14)は今でも我々にとってちょっとした”びっくり箱”なんだ」

「今年我々が学んだことは、来年に向けて価値のあるモノになるだろう。ただ現在のマシンにはもう取り組んでいないことは明らかだ」

 W14がこれまで直面している問題のひとつは、毎週末のパフォーマンスでも、そしてハンドリングの点でも予測不可能であるという点だ。

 ウルフ代表はこの予測不可能な性質のため、ドライバーがマシンの挙動になれるまで時間がかかり、レースウィークを通じてマシンが良くなっていく理由にもなっていると考えている。

「このクルマは依然として非常に敏感でセットアップが難しく、そのため我々はそれを乗りこなすためにより多くのセッションを必要としているんだ」

「ドライバーにとってみれば、ターンイン時にマシンがどう動くかが分からないため、セッションを通じて自信を得ることが大事になる。そして長く走れば走るほど良くなっていき、我々も微調整ができるようになり、それが助けになるんだ」

 なおメルセデスは今季中の勝利を諦めておらず、アメリカGPでアップデートを持ち込む予定だということも分かっている。