真似してて草。サインツJr.、F1日本GPで自身発案“DRSトリック”試したメルセデスを見て「マシンの中で笑っていた」
自身が”編み出した”策を自らを相手に使われることになったサインツJr.は「マシンの中で笑っていた」と語る。
マリーナ・ベイ市街地サーキットで開催されたシンガポールGP決勝で、首位を走っていたサインツJr.はレース終盤、フレッシュなタイヤで走るメルセデス勢からの攻撃をしのぐべく、ペースを緩めて2番手を走っていたマクラーレンのランド・ノリスをDRS圏内にとどめた。
DRSトレイン状態とすることで、メルセデス勢がポジションを上げづらい状況を作り上げたサインツJr.。首位を守りきり、今季唯一のレッドブル以外のレースウィナーとなった。
しかし鈴鹿ではそのポジションが逆転し、サインツJr.が5番手と6番手を走っていたラッセルとハミルトンのメルセデス勢を追い上げる形となった。
完走したドライバーの中で唯一1ストップ戦略を敢行したラッセルはレース終盤、タイヤのデグラデーション(性能劣化)が厳しく、メルセデスはその後ろにいたハミルトンを先行させるよう指示。ハミルトンに道を譲ったラッセルはサインツJr.からポジションを守るべく、ハミルトンにペースを緩めてDRS圏内にとどめてもらうようチーム側に依頼した。
知らせを聞いたハミルトンは「分かった」と答えたものの、この作戦は功を奏さず。サインツJr.はあっという間にラッセルを抜き去り、「彼ら、僕に対して僕のトリックを使ったね!」とチームに無線で伝えた。
ハミルトンとラッセルの間、6位でチェッカーを受けたサインツJr.は、目の前で展開されたシナリオを楽しんだという。
「実際、面白かったね」
motorsport.comの取材に対してサインツJr.はそう語った。
「130Rでルイスがスピードを緩めて、ジョージにDRSを与えるのが見えたから、マシンの中で笑っていたよ」
「僕はジョージにシケインでアタックしなきゃいけないし、彼をレーシングラインから外さなきゃオーバーテイクは不可能だと思っていた」
「シケインでかなり奥まで突っ込んで、少し切り返して、DRSとスリップストリームを駆使して彼を抜いたんだ。とても楽しかった。自分のトリックのせいでポジションを逃すところだったよ!」
また、仮にメルセデスがポジションを入れ替えなかった場合はどうなっていたのだろうか? サインツJr.は次のように語る。
「正直なところ、ルイスが後ろにいれば、メルセデスにはもっとチャンスがあったと思う」
「でも、(ポジションを入れ替える前)ジョージはS字やターン8とターン9(デグナー)でとても遅かったから、ターン11(ヘアピン)かターン13(スプーンカーブ)でルイスを攻められただろうね。ふたりともそこではかなり遅かったからね」
「どうなったかは分からないけど、ルイスが後ろにいてもリスキーだっただろうね。でもルイスを抜いたら、ジョージも抜けたはずだ」
ラッセルをオーバーテイクした後、ハミルトンの攻略を狙ったサインツJr.だが、終盤ハミルトンが余力を残していたことで、攻略は難しかったと語った。
「今回、鈴鹿ではオーバーテイクが難しいことが分かったと思う」とサインツJr.は言う。
「トラックポジションも重要だった。僕はルイスよりも0.4〜0.5秒は速かったし、彼に接近していたと思う」
「ただ、抜くには十分なタイム差じゃなかった。最後の2周は僕のほうが速かった。でも1秒速くないと抜けないんだ。シャルル(ルクレール/フェラーリ)もジョージをオーバーテイクするのにかなり時間がかかっていたからね」
「今回はトラックポジションが全てだと分からされた。僕らがピットストップで失ってしまったモノだね。ルイスの4秒前にいたのに、8秒後ろでピットアウトしたんだ」
なおサインツJr.は、ルクレールが4位を獲得したことを考えると、5位以上の結果も望めたのではないかと考えている。
「今回は結果以上に良いペースだったと思う。そうだよね?」とサインツJr.は言う。
「僕らはスタートからとても速かったと思う。僕はいいスタートを決められたし、最初のスティントも前を行くドライバーよりペースが良かったと感じていた。タイヤも上手くコントロールできていたよ」
「でもトラックポジションで後れを取ってしまうと、特に暑くて難しい鈴鹿ではオーバーテイクが難しくなる」
「でも正直なところ、今回はいつも通りに走れた。リズムを掴んでからは、マシンのこともよく理解できていたし、良い走りができた。最後のピットストップが残念で、タイムをかなりロスしてしまった」