2023年のスーパーGT最終戦もてぎで、自身のスーパーGTラストレースを戦った立川祐路(38号車ZENT CERUMO GR Supra)。自身が担当した後半スティントには、立川と同じデザインのヘルメットを被ったドライバーが背後に迫るシーンがあった。

 そのドライバーは19号車WedsSport ADVAN GR Supraを駆る阪口晴南。スーパーフォーミュラでは、立川が監督を務めるCERUMO・INGINGのドライバーである阪口は今回、立川へのリスペクトを込めて立川と瓜二つの特別デザインのヘルメットを製作したのだ。

 阪口は残り20周を切ったタイミングで、10番手を走る立川に追いついた。ポイント圏内をかけての戦いとなったが、残り7周というところで阪口に軍配。阪口の駆る19号車は8位、立川の駆る38号車は11位となった。

 阪口は当時のことを振り返り、立川に接近した時には込み上げてくるものがあったと語った。
「立川さんが徐々に前から見えて、少しずつ差が縮まっている感覚でした」

「これはこのスティント中に出会うなという感じで、すごく不思議な気持ちでした。レース中ですが、ちょっとジーンとしてしまいましたし、追いついた時にどういう気持ちになるんだろうと思いました」

 もちろん、阪口も感動の余韻に浸りっぱなしだったわけではない。ひとりのドライバーとして、立川を何としても抜こうとしたという。

「自分たちもレースをしていて、あの時はポイントを獲れるかどうかの状況だったので、絶対に抜くという気持ちでいました」

「バトルの最中も立川さんからは絶対に抜かれたくないという気迫も感じましたし、最後まで絶対に緩めることのない方だなと改めて思いました。刺激のある良いバトルだったと思います」

 一方の立川は、自らと同じヘルメットデザインの阪口が迫ってきた時の状況を次のように振り返る。

「レースになったら当然、抜かれたくない、抜きたいといういつも通りの思いだったので、そこに対する意識はあまりありませんでした。ただ難しいウエットのコンディションで前に行かれてしまったので、『“偽物”に行かれたな』と(笑)」

 また立川は、自分に対してリスペクトの気持ちを表してくれた阪口への感謝を述べた。 

「直接それ(ヘルメット)を見せられた時も、なんと言っていいか、うまく気持ちは言えませんでしたが、本当に嬉しいし、感謝ですね」

「ドライバーにとって、人のデザインのヘルメットで走るって大きなことだと思うんですよね。そのくらいのことをしてくれたと思っています」