F1サンパウロGPの決勝レースで、アルファタウリの角田裕毅は9位でフィニッシュした。これで角田は2ポイント獲得。前日のF1スプリントでの6位と合わせて5ポイントを獲得した。これでチームとしても、コンストラクターズランキング7番手のウイリアムズとの差を7に縮め、逆転の可能性が見えてきた。

 ただ決勝のレースペースを見ると、9位という結果はどうしても残念なように見えてしまう。場合によっては8位はもちろん、7位や6位の可能性も十二分にあったように思えてしまうのだ。

 角田は16番グリッドから決勝レースをスタート。スタート直後の混乱に乗じていきなり10番手までポジションを上げると、かなり良いペースで周回を重ねた。

 確かにダートに車輪を落としたり、ハーフスピンしたりとポジションをふたつ落とした。しかしペース自体はかなり良かった。例えばメルセデスのルイス・ハミルトンやジョージ・ラッセルはもちろん、アルピーヌのピエール・ガスリーよりも速く、フェラーリのカルロス・サインツJr.やレッドブルのセルジオ・ペレスと同等だったのだ。

 それを考えれば、少なくともガスリーよりも上の7位、うまく立ち回ることができればサインツJr.を抜いて6位も見えたはずだ。

 それが叶わなかった最大の原因は、やはり実質的な2ストップ目のタイミングにあったと言えよう。

■ライバルを圧倒した角田のレースペース

 上のグラフは、F1サンパウロGPの中団グループのレースペース推移を示したモノである。

 まず全体的なレースペースで言えば、前述の通り角田(紺色)がペレス(青)やサインツJr.(赤)と同等で、ガスリー(ピンク)やハミルトン(黄緑)、ラッセル(黄緑点線)よりも速かったのがよく分かる。

 角田は徐々にポジションを上げ、ガスリーやメルセデス勢に迫っていた。45周目を終えた段階で、角田の1秒前にいたラッセルがピットイン。これに反応する形でそのすぐ前にいたハミルトンとガスリーも2回目のタイヤ交換を終えた。

 この3台はコース復帰後、ペースを上げることになった。一方で3台を急激に追い上げていた角田はステイアウトを選択。この結果、この段階でガスリーやハミルトンは、1周あたり角田よりも1〜2秒速いペースで走った。いわゆるアンダーカットを成功させ、角田との差を再び開いたわけだ。そして角田がピットストップを行なったのは、55周目が終了した時点である。

 2回目のピットストップが始まる前、角田はハミルトンを6.3秒差で、ガスリーを2.7秒差で追いかけていた。そしてその差をどんどん縮めている段階だった。

 しかし角田が2回目のピットストップを終えてコースに戻った時、ガスリーは15.5秒、ハミルトンは12.9秒前に行っていた。つまり角田は、ハミルトンに対しては6.6秒、ガスリーに対しては12.8秒のアドバンテージを与えてしまった格好だ。

 その前のスティントを考えれば、アルピーヌもメルセデスもデグラデーション(タイヤの性能劣化)が大きく、最終スティントも同様の傾向になるとの見方が強かった。アルファタウリとしてもそう考えたのだろう。それを考えれば、角田に新しいタイヤを履かせれば、十分に抜き返すことができるはず……そういう計算をしていたはずだ。

 しかし誤算があった。ひとつは、ガスリーのデグラデーションが、最終スティントではほぼ皆無を言って良い状態にあるなど、ライバルたちとの差を思うように詰められなかったのだ。

 ガスリーはタイヤを履き替えたことで、一気に2秒以上ペースを上げた。ただその後はペースを維持。道中でハミルトンを交わしつつ、角田との差を築くことができた。

 一方ハミルトンのペースはガスリーほど優れたものではなかったものの、それでも第2スティントほど悪くはなく、なんとかペースをマネジメントしていたように見える。

 対する角田はメルセデス勢とガスリーが2度目のピットストップを行ない、前が開けると、ペースを上げている。つまりタイヤをしっかりとマネジメントできていたわけで、その結果アルファタウリがピットストップを選択するのを躊躇したとも考えられる。そしてピットストップ後、より新しいタイヤで前を追ったが、第2スティントほどのペース差はなかった。

 そしてふたつ目の誤算がアルファタウリを襲った。クラッチのトラブルである。

 2度目のピットストップを終えた角田は慎重にペースを上げ、ハミルトンやガスリーのペースを上回ろうとしていた。しかし65周目から、ペースを約1秒落としているのがグラフを見るとよくお分かりいただけるだろう。おそらくこのタイミングが、チームがクラッチの懸念を把握し、角田にペースをコントロールするよう指示したタイミングであると考えられる。

 角田がペースを落として走ったのは終盤7周。つまり、トラブルさえなければ7秒速くチェッカーを受けられた可能性がある。

 最終的な順位では、角田はハミルトンの7秒後方でフィニッシュしている。トラブルがなければ、ハミルトンに追いつくことができたはずだ。しかし逆に言えば、ハミルトンに追いつくところまでが精一杯だった可能性があり、オーバーテイクのチャンスがあったとしても、1回あったかどうか……そんな非常にタイトな状況だったはずだ。

 逆にもっと早く……例えば5周ほど早く最後のピットストップを行なっていれば、ハミルトンに追いつき、攻略できていた可能性がある。ハミルトンの攻略がうまくいけば、ガスリーを攻略することだって可能性だったかもしれない。もちろん、クラッチのトラブルがなければの話だが。

 結果として角田の9位は、トラブルがあったことを考えれば望みうる最大限の結果だったかもしれない。しかしトラブルがなかったとしても、今回の戦略ではハミルトンすら攻略できたかどうか実に微妙だった。

 マシンのパフォーマンスを考えれば、今回のアルファタウリはアルピーヌやメルセデスよりも前の順位を確保できたはず。戦略面は、依然アルファタウリにとっての課題と言えるだろう。

 また、マシンが速かったにも関わらず、予選Q1で2台揃って脱落したことも課題であろう。マシンパフォーマンス通りの予選ポジションさえ確保できれば、もっと簡単に好結果を掴むことができただろう。

 この他、前述の通り角田はコース上で2回のミスがあった。さらに1回目のピットストップでは、作業を終えた後、走り出す際になかなか加速しないというシーンもあった。この時に4〜5秒ほどを失っている。

 戦略、予選、ドライビング、ピットストップ……これだけのロスが重なりながらも入賞できたアルファタウリや角田。それを考えれば、マシンのパフォーマンスは今や充実期に突入したと言える。全てが噛み合った時にどんな結果がもたらされるのか……今シーズンの残りはあと2戦である。