負傷した山本尚貴の代役という形で、100号車STANLEY NSX-GTのドライバーとしてスーパーGTのGT500クラスにデビューした木村偉織。強豪TEAM KUNIMITSUからGT500に参戦するというまたとない機会を手にした木村だが、テストも一切できない中、ぶっつけ本番でのデビューは彼にとって少なくとも理想的なものではなかっただろう。そして2戦目となった最終戦もてぎは接触によりペナルティを受けるほろ苦い結末となった。

 GT500デビュー戦となった第7戦オートポリスでは、予選Q2を担当するもタイヤをロックアップさせてしまい、アタックをまとめることができず。ただ決勝レースでは安定して上位集団と遜色ないペースで走行し、23号車MOTUL AUTECH Zに乗るベテランの松田次生を最後まで抑え込んだ。ホンダ・スーパーGTのラージ・プロジェクトリーダーである佐伯昌弘氏もこの走りを評価し、「これで一気に成長するんじゃないか」と期待感を口にしていた。

 そして迎えたもてぎラウンドで木村は、専有走行で予選シミュレーションを行なう予定だったが、チームのセットアップ作業を優先することになったため、アタック想定のラップができないまま予選を迎えることになった。

 木村は結局予選Q2で6番手タイムを記録し、決勝では前半スティントを担当したが、レース序盤はコースの一部で雨が降るという難しいコンディションであった。そんな中で木村は11周目の130Rで14号車ENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也に交わされて7番手に落ちたが、直後のS字で14号車のインをうかがったところ、14号車に接触してしまい、グラベルに押し出すような形となってしまった。このインシデントに対して木村にはドライブスルーペナルティが出され、100号車は順位を落とした。

 レース後、シーズンフィナーレに向けてホームストレート上に多くのファンが詰めかける中、その準備をピットレーンで待つ木村は悲痛な表情を浮かべていた。言葉を絞り出すような形で、木村はレースをこう振り返った。

「オートポリスでは500クラスのマシンにテストなしでパッと乗って、完走できるかすら不安でしたが、無事完走することができました」

「今回はマシンのセットアップで苦戦していた部分もあったので、僕が専有走行で予選シミュレーションをする予定でしたが、セットアップを優先することになりました。予定していた周回ができず、予選Q2は難しい状況でしたが、その中で6番手を取れたことは良かったです。でも決勝では行き過ぎてしまって……」

「あと少しでも相手がスペースを残してくれるかと思っていましたが、それは完全に自分の甘えでした。バトルを仕掛ける側が常にリスクを取らないといけないのがレースです。その中で自分がリスクを取り過ぎてしまい、14号車の皆さんには迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 バトルの中で、雨の影響はあったと思うか? そう尋ねると、その影響は多少はあったのではないかと振り返る。

「あの区間は乾いてはいましたが、自分もロングランができていなかったので、タイヤの落ちでグリップダウンしているのか、雨で路面が悪くなってグリップダウンしているのか、その判断がつきませんでした」

「序盤のドライコンディションではすごく良いペースで走れていましたが、そこからは経験者たちに追いかけられる展開になり、今振り返ると、そこで自分自身焦ってしまったと思います」

 木村は現在、スーパーフォーミュラ・ライツで平良響に次ぐランキング2番手につけている。同カテゴリーの最終戦は、スーパーGT最終戦の1週間後に、同じくもてぎで開催される。かなり落ち込んだ様子の木村だったが、来季以降に向けて少しでもアピールするためにも、SFライツに気持ちを切り替えて臨むしかない。