FIAは、世界耐久選手権(WEC)のハイパーカークラスにおけるBoP(性能調整)が「怠惰の枕(怠惰を助長するもの)であってはならない」として、2024年に向けてシステムの見直しに取り組んでいる。

 この言葉は、先週末にバーレーンで開催されたWEC最終戦で、FIAとWECを共催するACO(フランス西部自動車クラブ)がBoPのビジョンを説明した際、FIA耐久委員会のリシャール・ミル会長が口にしたものだ。

 両団体は、BoPをよりシンプルなものにし、マニュファクチャラーにより多くの責任を負わせるものにしたいと説明した。

「もし、ある競技者が選択を誤ったり、パフォーマンスを発揮できなかったりしたためにBoP(による調整・救済)を期待しているのであれば、それは不可能だ」

「BoPはすべての問題を解決することはできない」

 またACO会長のピエール・フィヨンは、BoPは「勝てないときの言い訳であってはならない」と付け加えた。

 FIAとACOのコメントは、9月にパリで開催されたワーキンググループでのルールメーカーとメーカーによる議論を受けたものだ。ここでは、ハイパーカークラスに参戦する大多数が現状維持に賛成したと見られている。

 しかし、FIAとACOは、来年に向けてBoPの範囲を縮小する計画が進行中なことに変わりはないと主張した。

「我々はそれを改善し、よりシンプルになるよう変更したい」とフィヨン会長は説明した。

 WECのフレデリック・ルキアンCEOは、この計画についてさらに詳しい見解を示した。

「我々の責任は、全マニュファクチャラーをパフォーマンスの枠に入れることだ。そしてそれから、彼らが彼らの仕事をする」

「それは非常に重要なことだ。なぜなら、それはスポーツにおける実力主義の概念だからだ」

 ルキアンCEOは、「ベストがベストであり続ける」ことが重要だと強調した。

 ミル委員長は、BoPの存在意義のひとつはハイパーカーの開発競争を防ぐことであり、LMHとLMDhのルールブックは各マシンが適合しなければならない性能の範囲を定めており、同じ目標を達成するために設計されていると指摘した。

「すでに我々は、コストの爆発的な上昇を避けるための材料を持っている」と彼は説明する。

「我々には、人々が自分たち自身を表現できるフォーマットがあるんだ。スティントやタイヤ消費、戦略、ドライバーなど変動するパラメーターはたくさんある。我々とは関係のないパラメーターはたくさんあるんだ」

 FIAとACOは、2024年に向けて計画していることの核心部分については明かさなかった。

 しかし彼らのコメントからは、現行システムの構成要素を残したいと考えていることがうかがえる。その中には、フロントアクスルにハイブリッドシステムを搭載するLMH車両の、4輪駆動によるメリット緩和も含まれている。

 一方で、すべてのマシンのバランスを細かく調整する試みは放棄されるかもしれない。

 こうした変更に、トヨタやフェラーリは賛同していると見られている。TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、9月に開催されたWEC富士で、現在のシステムについて「マニュファクチャラーからパフォーマンスに対する責任を取り除いているため、持続不可能だ」と非難した。

 2023年のBoPシステムは、シミュレーションとコースデータの分析を通じて各車のポテンシャルを評価することに基づいていた。このシステムでは、車両ごとのパフォーマンスを調整する”マニュファクチャラーBoP”について、シーズン中に1度だけ大きな変更が可能で、それは6月のル・マン24時間レース後に設定された。

 プラットフォームBoPとして知られるLMHとLMDh間のバランス調整も、最初の2レースとル・マン後の2レース後に変更される可能性があった。

 しかしFIAとACOは、ル・マンを前にして、マニュファクチャラーの全面的な支持を得ることなく、大規模な調整を行なうことを選択した。開幕からの数戦でトヨタ、フェラーリ、プジョーのLMHマシンの性能差から、その必要があったと主張したのだ。

 一方でプジョーは、バーレーンでLMH車両『9X8』のコンセプトを大幅に見直すと発表した際にBoPに言及。これがFIAとACOによるBoP変更の一因になっていると見られる。

 ステランティス・モータースポーツのシニア・バイスプレジデントであるジャン-マルク・フィノは、「1年が経って、BoPが我々の期待を満たしていないことがわかった」ため、マシンのデザインを徹底的に見直さざるを得なくなったと主張したのだ。

 ミルが”怠惰の枕”という言葉を使ったのが、プジョーに対するものであったかどうかは定かではない。