F1アブダビGPの決勝レースでは、アルファタウリの角田裕毅が8位でフィニッシュ。目標としていた、ウイリアムズからのコンストラクターズランキング7位奪取は果たせなかったが、角田はレース中5周にわたってリードラップを取り、さらにドライバー・オブ・ザ・デイにも選ばれた。

 角田はこのレースで、ほとんどのドライバーが2ストップ戦略を採る中、1ストップで走り切ることを選んだ。結果的に6番グリッドからスタートしながら、ポジションをふたつ落とした8位でのフィニッシュ……この戦略は成功だったのだろうか?

 このレース限りでチーム代表の職を退くことになったフランツ・トストは、レース後のコメントで次のように語っている。

「ユウキは1ストップで走ることを選択したが(中略)結局これは間違った決断だった。2ストップ戦略ならば、ユウキは6位か、少なくとも7位でフィニッシュできたと思う」

 トスト代表の言うように、1ストップ戦略は失敗だったのだろうか? レースペースを分析してみよう。

■アロンソ&ピアストリに先に動かれた!

 このグラフは、58周で争われたF1アブダビGP決勝のレースで6位〜11位になったドライバーたちのレースペース推移である。

 第1スティント、角田は周囲のマシンと遜色ないペースで6番手を走っていた。そんな中、ひとつ後ろを走っていたフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)が、12周を走ったところでピットイン。これに反応するように、角田のひとつ前を走っていたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、13周目にピットに向かった。

 アロンソがピットに入る1周前、角田とアロンソの差は0.8秒だった。おそらく13周目にピットに入っていたとしても、角田がアロンソの前でコースに戻るのは難しかったように思われる。アロンソ、そしてピアストリに勝つためには、もちろん”賭け”という側面はあるものの、この時点では1ストップが最良の判断だったはずだ。

 新しいタイヤを履いたアロンソやピアストリは、ステイアウトした角田よりも1秒以上速いペースで走行。一方角田は、なんとかペースを維持したもの、第1スティント全体で見れば、若干のデグラデーション(タイヤの劣化によるパフォーマンスの低下)の傾向が見られた。

 レース終盤の戦いを厳しいモノにしたのは、角田のタイヤ交換後のペースにあったと言えるかもしれない。

 角田は22周を走り切ったところでピットインし、それまで履いていたミディアムタイヤからハードタイヤへと履き替えた。そしてコースに戻った時の角田のペースは、ピアストリやアロンソのペースと変わらないものだったのだ。

 当然当時の角田は、1ストップでチェッカーまで辿り着くべく、タイヤを労わっていたという側面もあるだろう。しかしライバルよりも新しいタイヤであるというメリットをもう少しでも活かすことができていれば、レース終盤の戦いをもう少し楽にしていただろう。

 角田はそのペースコントロールが功を奏したのか、レースの最後までほぼペースを落とさず走り切ったことが、グラフからも一目瞭然である。しかし、2ストップ作戦でさらに新しいタイヤを履いたライバルたちのペースは優れており、最終的には追いつかれ、そして抜かれてしまったわけだ。

■もっと悪い結果になっていたかもしれないシナリオ

 しかし、1ストップがあながち間違っていたわけではないとも言える。

 こちらのグラフは、レース中の先頭からのタイム差を折れ線で示したものだ。角田がF1で初めてリードラップを記録した5周も、このグラフでは見ることができるが、それ以上に注目していただきたいのが、アストンマーチンのランス・ストロールとの差である。

 ストロールはハード→ハード→ミディアムと繋ぐ変則的2ストップを採った。そのため、1回目のピットストップが、角田と同じタイミングとなった。

 この時の差は5秒弱だった。しかし最終的なふたりの差は、12秒。つまり角田はストロールに対して、戦略を1ストップにしたことにより7秒を稼いだことになる。

 もし中途半端なタイミングで2ストップ戦略に切り替えたのならば、それは角田陣営としては最悪の選択だったはずだ。以前のレースでは、アルファタウリは戦うべきではない相手に反応し、好結果を逃してしまうということもあった。しかし今回はしっかりと相手(おそらく今回の場合は、ピアストリを相手にレースをしていたはずだ)を見据え、角田もチームも堂々と戦ったと言える。

 結果的に言えば、アロンソやピアストリと同じタイミングで最初のピットストップを行なうのが、最適解だったと言えよう。しかし最終的に敗れたとはいえ、自分たちの戦略を貫き、上位に風穴を開けようと立ち回った角田とアルファタウリの戦いぶりは、ドライバーとしてもチームとしても、賞賛に値するものだったと言えよう。しかも使い切ったタイヤで、ルイス・ハミルトン(メルセデス)の猛攻を凌ぎ切ってみせた。

 トスト代表は退任の置き土産として、厳しい言葉を投げかけた。しかしアルファタウリと角田の成長が見えた、そんな1戦だったのではないだろうか。