2024年から世界耐久選手権(WEC)ハイパーカークラスに新開発のル・マン・ハイパーカー(LMH)を投入するイタリアのイソッタ・フラスキーニ。彼らは元々提携を結んでいたイギリスのベクター・スポーツと袂を分かち、ル・マン24時間レースのLMP2クラスやヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)の常連であるフランスのデュケイン・オートモーティブと手を組むこととなった。

 WECのLMP2クラスを2シーズンにわたり戦ってきたベクターは2022年12月にイソッタとの提携を発表したが、チームは2024年のWECエントリーリスト発表に先立ち、シリーズから1年離脱することを発表した。

 自動車産業と航空宇宙産業を専門とするデュケイン・グループの一部であるチームは今後、イソッタとマシン開発を主導したミケロット・エンジニアリングと協力し、2024年にWECを戦うこととなった。

 イソッタのモータースポーツ代表であるクラウディオ・ベッロはmotorsport.comに対し、今回のチーム変更は経済的な理由によるものだと説明した。

「世界的な企業であるデュケインが、マシンをサポートするスポンサーを連れてきた。小さな会社である我々は、現実的なサポートを受けなければならなかった」

 そしてベッロ代表は「簡単な決断ではなかった」語り、イソッタが将来的にベクターと仕事をすることに「まだオープンだ」と付け加えた。

 一方で、ベクターのチーム代表であるゲイリー・ホーランドは、motorsport.comの取材に対して、イソッタが契約条件を変更しようとしていたことを認めた。

 ホーランド代表は次のように語った。

「(イソッタ側に)もう少しお金が必要だと言われたから、我々は『問題ない。このデータを公開してくれないか? そのシンプルな要求に答えてほしい』と言った。すると『絶対にダメだ』と言われた」

「我々によって運営されるマニュファクチャラープログラムもあったが、もはやそれを果たすことができない。クラウディオの説明は、経済上の理由を引き合いに出すことでそれを裏付けしている」

 またホランド代表は、イソッタとミケロットが契約に反してマシンの開発段階でベクターに「最小限のアクセス」しか認めていなかったと語った。

 ベクターのドライバーは夏季にイソッタとテストを開始する予定だったものの、8月にモンツァでガブリエル・オーブリーが4周しただけでテストは終了した。

 そしてホランド代表は、ベクターとイソッタとの関係が途絶えたことに「大きな失望」を感じていると付け加えた。

「チャンピオンシップを何度も制したドライバーや、地球上で最も大きなレースで優勝したドライバーなど、強力なラインナップを揃えていた」とホランド代表は言う。

「彼らがマシンに乗ることも、あのプログラムに参加することもないと思うと本当に残念だ」

 イソッタとデュケインはWEC参戦に向けた提携以前から関係を持っており、デュケイン傘下の会社は、ティーポ6コンペティツィオーネLMHの市販車バージョンである“ストラダーレ”のカーボンホイールを製造している。

 デュケインのレーシングチームは2019年からル・マン24時間レースでLMP2クラスの常連となり、2023年はクラス3位を獲得したが、2024年は初めてWECに参戦する。

 フランスGT選手権参戦のため2014年に設立されたデュケインのレーシングチームは、2016年にELMSのLMP3クラスへ参戦し、2018年にはLMP2クラスにステップアップした。

 デュケインは2017年末にフランスのコンストラクターであるノルマを買収。2021年にはDKRエンジニアリングと共に、M30でELMSのLMP3タイトルを獲得した。

 2024年に向けて、イソッタのドライバーはふたり発表されている。ひとりは2017年のTCRインターナショナル・チャンピオンで、ティーポ6のテストプログラムの中心人物のひとりであるジャン-カール・ベルネ。もうひとりはELMSの2023年LMP3チャンピオンのアレハンドロ・ガルシアだ。

 ホランド代表は、ベクターがハイパーカークラスへのステップアップを望んでいることに変わりはないと強調した。

「今日は悪い知らせに思えても、明日には大きなチャンスになるかもしれない」とホランド代表は言う。

「2025年にハイパーカーでレースをしたいという野望はまだ持っているし、2024年には別のメーカーでテストをしていきたい。それを達成するため、我々は既に交渉中だ」

 ベクターは既に、ELMSでLMP2プログラムを継続することを発表している。