レッドブルは2022年にRB17と名付けられたハイパーカーの開発計画を発表したが、その心臓部には1万5000rpmまで回るV10エンジンが搭載されることになったようだ。

 その名の通り、このハイパーカーは”F1由来”。レッドブル・レーシングは歴代F1マシンに“RB+通し番号”と命名してきたが、COVID-19の世界的蔓延によって現行レギュレーション導入が延期され、さらに2021年のマシンは前年のマシンをほぼそのまま使わなければならなくなったことで、”RB17"という名称が欠番となった。この欠番となったRB17が、このハイパーカーに冠されている。

 設計には空力の鬼才と呼ばれ、数々のチャンピオンF1マシンを世に送り出してきたレッドブルのチーフテクニカルオフィサー、エイドリアン・ニューウェイが携わる。

 RB17の開発と製造を担当するのは、レッドブルの市販プロダクト研究開発部門である「レッドブル・アドバンスド・テクノロジーズ」。公道走行が不可能なサーキット専用マシンとなるが、メルセデスAMG ONEやアストンマーティン・ヴァルキリーと同じ、F1マシンの系譜を持つ1台となる(ヴァルキリー開発プロジェクトにはレッドブル、ニューウェイも携わった)。

 RB17の発表時には、現行F1マシンと同様にグラウンドエフェクトを活用し、ツインターボV8エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニットを搭載、F1マシンに迫る性能を目標としているとされていたが、その仕様に一部変更があったようだ。

 レッドブル・レーシングのポッドキャスト「Talking Bull」の中でニューウェイは、RB17が1万5000rpmまで回る自然吸気のV10エンジンを搭載し、内燃エンジンだけで1000馬力という驚異的なパワーを発生させ、さらにそこに電気モーターの200馬力が組み合わさると明かした。

 ポッドキャストのホストに、マシンを設計する時は空力を先に考えるのか、それともエンジンから先に考えるのかと尋ねられたニューウェイは次のように答えた。

「(マシンを設計する時は)私は常に全体的なアプローチを心がけている。まず、そのクルマをどうしたいかということだ。そこで我々は第一に、クルマが魅力的に見えるようにすることを決めた」

「もちろん、見る人の目を惹きつけるクルマでなくてはいけない。良い見た目になったと思うし、他の人もそう思ってくれると良いね。クルマのモデルを発表する時に分かるだろう」

「つまり、見栄えが良くなければいけないし、ある種のアートのように見えなければいけない。この手のクルマはアート作品として見るべきだよね」

「そして音も含めた魅力でなくてはいけない。だから我々は自然吸気エンジンを選んだのだ。1万5000回転の高回転型V10で、圧倒的なパワーを発揮する」

 そしてニューウェイは、かつてのF1マシンが放った“エモーショナルな”サウンドをRB17で再現したかったと続けた。

「90年代半ばから90年代後半にかけての高回転V10のサウンドを覚えている人もいるだろう。あの音は素晴らしかった。だからそれを再現したかったんだ」

「たとえテストコースにいるマシンだとしても、あのようなマシンが走り回る音を聞くとパワーを感じるし、鳥肌が立つような感覚になると思う。あれは全て体験の一部なのだ」

 またニューウェイは、RB17のエンジニアリングチームは900kgを下回る車体重量を目指していることも明かした。900kgという数字をより身近なクルマに置き換えると、現行(ND系)のマツダ・ロードスターで最軽量の日本特別車”990S”で990kgとなる。

 車体重量を軽くすることで、RB17のパワーウェイトレシオはF1に匹敵するレベルだ。

 ニューウェイ曰く、RB17はサーキットでもF1マシンと肩を並べるほどのパフォーマンスを発揮するという。193km/h時点では車重と同等のダウンフォースを生み出し、最大で1.7tのダウンフォースを発生させるとニューウェイは明かした。

 2シーターのRB17は、ヴァルキリーよりも広々としたキャビンを持ち、高身長のドライバーでも窮屈にはならないスペースが足元には確保されている。その他にも、このポッドキャストではRB17が特注のミシュラン製ハイグリップタイヤを履くことや、F1では禁止されているアクティブサスペンションを搭載するなどの特徴も明かされた。

 既にRB17の開発は進行しており、今年の夏には実物大のスケールモデルが公開される予定だ。レッドブルは2024年を通して様々なパーツのテストを実施し、2025年にはサーキットでのテストを開始する。完成車の生産が開始されるのは2026年以降になるという。

 生産台数は50台限定だが、ニューウェイがそのうち1台を譲り受けるため、厳密には49台。幸運にもその中の1台を引き当てた49人のオーナーは、レッドブルのF1シミュレーターを使ったサーキットトレーニングを受けることも可能だ。

 ちなみに価格は500万ポンド(約9億3500万円)+税となっている。