2024年シーズン限りでメルセデスを離れ、翌年からフェラーリへと移籍するルイス・ハミルトン。メルセデスはハミルトンと長期契約を結んでいなかったが、その背景についてトト・ウルフ代表が語った。

 昨年8月、ハミルトンはメルセデスと2年の契約延長に合意した。これでハミルトンは少なくとも2025年まではチームに残るものと思われていたが、実は最後の1年はオプションとなっていた。そしてハミルトンは早くもオプションを行使しないことを決め、フェラーリへと移籍した。

 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)らチームのエース格が長期契約での残留を決めている中、ハミルトンとは1年+オプション1年という短い契約期間にとどめていたメルセデス。これは、彼らが抱える育成ドライバーであるアンドレア・キミ・アントネッリにチャンスを与えるためという側面もあったようだ。

 今季からFIA F2に参戦するアントネッリは弱冠17歳。これまではF4やフォーミュラ・リージョナルで次々タイトルを獲得し、F3を飛び級してF2にやってきた期待のドライバーだ。メルセデスは将来有望なアントネッリを失うわけにはいかないと考えているのだ。

 ウルフ代表は、2014年にフェルスタッペンの獲得に失敗したことを引き合いに出した。当時のメルセデスはフェルスタッペン獲得を熱望していたものの、彼に提供できるF1シートがなかった。しかしその一方でレッドブルはトロロッソ(現ビザ・キャッシュアップRB)のシートを与えることができた。そこからのフェルスタッペンのF1キャリアは知っての通りだ。

 ウルフはオーストリアの放送局『ORF』に次のように語った。

「昔、マックスをドライブさせるというチャンスがあった時と同じような状況だ」

「当時それは叶わなかったが、それは単純に我々にコックピットが足りなかったからだ」

「我々は(ニコ)ロズベルグとハミルトンと長期契約を結んでいたし、レッドブルは当然チャンスを掴んだ。彼らは(フェルスタッペンを)トロロッソと契約させ、翌年にレッドブルに乗せる可能性を広げた」

「そうして我々は若いドライバーを失った。彼がどれほど成功したかは知っての通りだ」

「そして今、非常に高いレベルで走っているジュニアドライバーが控えているからこそ、私は選択肢をオープンにしておきたかった」

 一方でウルフは、現状1席が空きとなっているメルセデスの2025年のシートはアントネッリのために取っておくとは限らないと話す。

「だからといって、来年に確実にアントネッリを乗せるというわけではない」

「彼は17歳だ。時期尚早かもしれない。ただ5年先、10年先を見据えて、選択肢を持っておきたかったんだ」

 またアントネッリのポテンシャルについて、ウルフは次のように語る。

「ある意味、彼は神童だ。彼はあらゆるカートのレースで勝ち、F4ではルーキーイヤーで全てのタイトルを勝ち取った。そこからステップアップして、そこでも全てタイトルを獲得した」

「F3ではテストの時間もあまりないということもあり、F3はスキップすることになった。その代わりF2に参戦することになるが、これは彼にとって大きなステップアップだ。マシンは大きくてパワーがある。大抵のレースがF1のサポートレースだから、そういう意味でも良い経験になるだろう」

 ウルフ曰く、今季はアントネッリを2022年型F1マシンでテストさせるとのことで、「大規模なテストプログラムによって彼が2025年(のF1昇格)に向けて準備が整っているのか、それとも2026年に向けては異なる状況になるのかを見極める」と認めた。

 ただ、2026年シーズンにアントネッリを昇格させようとした場合、厄介な問題がある。ジョージ・ラッセルが今後もメルセデスのドライバーとして残るのであれば、ラッセルの相方として1年だけ別のドライバーを起用する必要があるのだ。

 ウルフは今後のドライバー市場について「強力なドライバーが2025年にフリーとなるため、信じられないほど興味深いものになる」と述べ、メルセデスは「今後2、3レースにわたって状況を注視する」とした。

 さらにウルフはこう続けた。

「経験に頼るのか、それとも新しい何かに挑戦するのか? それともリスクを背負ってでもルーキーに焦点を当て、中長期的なパフォーマンスという観点から見ていくことになるのか? ということだ」