F1オーストラリアGPの決勝レースで7位入賞を果たしたRBの角田裕毅。もちろん、本来なら上位で入賞するはずのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とメルセデスの2台がフィニッシュできなかったこと、アストンマーティンのフェルナンド・アロンソがペナルティを受けたこと……これらの恩恵を受けた形であるのは間違いないが、上位に何かあった時にそのチャンスを掴むのが大事。今回の角田は、その役目を十二分に果たした格好だと言えよう。

 その角田はどんなレースを展開したのか? そのレースペースから振り返ってみよう。

 角田はスタートでアストンマーティンのランス・ストロールに先行され、8番グリッドからひとつポジションを落としてしまった。

各車のレースペースは?

 今回予選では、アストンマーティンを上回る順位を獲得してみせた角田。しかし本来のパフォーマンスはアストンマーティンの方がRBよりも上であるのは間違いない。しかし角田は第一スティントで、ストロールに必死に食らいついていった(赤丸の部分)。

 そんな中ストロールは、8周を走り切ったところでピットイン。これは当初の予定よりもかなり早いタイミングであった。

 ストロールはレース後、「デグラデーションが大きくて、タイヤをマネジメントするのは簡単じゃなかった」と語っているが、実際のレースペースを見てみると、特にペースが落ちているようには思えない。

 角田はこのストロールの1周後、9周を走ったところでピットインしている。これはストロールに反応したというよりも、後方にいたアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)を警戒した行動だったように見える。

 そもそも先行しているマシンの後にピットに入ったところで、アンダーカットして順位を奪うという戦略は成り立たない。しかしアルボンは今回、最高速も伸びており、前に立たれると厄介な相手だった。実際、レース中のスピードトラップの最高速は、角田が310.9km/hだったのに対し、アルボンは322.4km/h……この差はあまりにも大きい。角田としては、特に前に出したくなかった相手だったため、早めながら反応してピットストップを終えておかなければならなかった。

 角田のレースペースをみると、それが垣間見えるように思える。第一スティント、角田はピットストップするまで、実はペースがほとんど落ちていない(赤丸の中の最後の部分)。そしてピットストップを終え、ハードタイヤに履き替えた後の角田のペース(青丸の部分)は、タイヤ交換をする前とほとんど変わっていないのだ。タイヤを交換したメリットはほぼゼロである。

 その一方で、アルボンの前ではコースに戻れた……つまりあくまでアルボンをカバーするだけのために、このタイミングで1回目のピットストップを行なったということだろう。前述の通りアルボンに先行されていれば、おそらく角田の入賞はなかった。それを考えればれば、チームは正しい仕事をしたと言えるだろう。

 第2スティントと第3スティントで角田は、タイヤのデグラデーションに苦しむことになった(2箇所の黄色の丸の部分)。特に、レース終盤のペースの落ち方の方が大きく、第2スティント終盤は、デグラデーションこそあれど、なんとか持ち堪えている。

 この2回目のストップは、直後にいたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)がピットストップしたことに反応してのものだろう。しかもヒュルケンベルグがコースに復帰したその真後ろには、やはりアルボンがいた。開幕2戦でハースに苦しめられた角田陣営としては、やはり警戒すべき相手だったのだ。

 ただ角田はヒュルケンベルグの2秒前でコースに復帰すると、その後はその間隔を基本的にキープ。前述の通り角田はレース終盤にデグラデーションに見舞われたが、ヒュルケンベルグの方が先にペースを落としており、角田を攻撃するだけの力は残っていなかった。

 ハースとしては、角田を攻略することが今回のレースの目標だと考えていた。レース後、同チームの小松礼雄代表は次のように語った。

「角田にやられましたね」

「彼のペースは我々よりも良かった。でも最初のピットストップを正しく行なっていれば、第2スティントではもっと接近して戦うことができたと思います」

「ケビン(マグヌッセン)に対して完璧な仕事をしていれば、最後まで角田選手と戦うチャンスがあったと思います。それが我々のやるべきことなのです」

 そう言うハースの作戦を封じるという点でも、今回のRBのチームは、正しい仕事をしたと言えよう。
 次のレースは鈴鹿での日本GP。基本的なパフォーマンス面で言えば、角田が望むことができるのは11位が最上位。しかし上位チームをひとつでも食い、母国日本での初入賞を決めてほしいところだ。